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インターネット上の匿名掲示板に投稿される複数の短文を運営者が恣意(しい)的に集めて、記事をつくる「まとめサイト」と裁判で争ったのは、フリーライターで在日朝鮮人女性の李(り)信恵(しね)さん(47)だ。李さんは差別や名誉を毀損(きそん)する記事で精神的苦痛を受けたとして、まとめサイト「保守速報」の運営者を大阪地裁に訴えた。
保守速報は記事で李さんを「気違い女」「バカ左翼朝鮮人」「ゴキブリ朝鮮人」「日本から出て行け」など読むに堪えない言葉で攻撃していた。
保守速報は大手のまとめサイトとして知られる。李さんが訴訟を準備していた2014年当時、保守速報の閲覧数は1年で延べ4億人、1日当たり75万人が読んでいた。19年1月11日現在、ツイッター(短文投稿サイト)のフォロワー(読者)の数も6万人に及ぶ。
保守速報はネットの匿名掲示板の投稿を保守的な政治思想に基づきまとめ、中国や韓国、在日朝鮮人、沖縄の基地問題などを取り上げ差別的な表現で中傷する記事を多く発信している。
14年の衆議院解散の話題で民主党を揶揄(やゆ)した保守速報の記事を安倍晋三首相が自身のフェイスブック(会員制交流サイト)でシェア(共有)したことでも物議を醸した。現在、首相のフェイスブックからこの記事は削除されている。
取材班が8日調べたところ、緑ヶ丘保育園の事故に関する記事は7本確認されたが、12日現在は3本に減っている。
取材班はサイトのメール欄から運営者に対し記事の作成意図などについて問い合わせたが返信はない。サイトの「ドメイン」(ネット上の住所)情報を調べるも大阪府の代行業者に行き着き、運営者自身の居住先を含めそれ以上、探ることはできない。取材班は裁判で運営者の弁護を務めた弁護士を通し、運営者の取材を依頼したが拒否された。
12月上旬、取材班はコリアンタウンがある大阪市の鶴橋駅で李さんと待ち合わせ、喫茶店で話を聞いた。
「2013年ごろから私を攻撃する記事が増えた」と李さんは語り始めた。「標的」になるきっかけは、コリアンタウンがある東京都新大久保の街頭で「殺せ、朝鮮人」と叫ぶヘイト(差別)運動に対して、批判する記事をネットメディアで書いたことだった。
保守速報が李さんの記事を発信するたびに、李さんの元には膨大な数の差別的な言葉や不快な画像、みだらな画像が送られるようになった。「1日5000、多いときは2万件届いたこともある」。淡々とした口調だが表情はこわばっているのが分かる。恐怖とストレスで李さんは不眠や吐き気に襲われ、突発性難聴などを発症した。
「夜に一人で歩くのも怖くなった。悔しいし、腹が立つし、悲しいけど、その姿を見せると『効果があった』と相手を喜ばせてしまう」。気丈に振る舞う姿が、傷の深さをうかがわせた。
(ファクトチェック取材班・安富智希)
琉球新報
2019年1月13日 05:00
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