ダンジョンマスター Lv.32at RETRO
ダンジョンマスター Lv.32 - 暇つぶし2ch1032:dm10
18/05/14 11:20:58.68 b2TJl7dA0.net
「調和はいかが、セロン-」 歌うように言うと、ベイラは枝を捨て、セロンにかわいらしい柔らかな手をさしのべた。「1日中待ってたんだから」 待つ。何かを待つ。師に自分の帰りを待てと頼んだ。でも、何のために。
セロンはアゴをかいた。だが、何も思い浮かばなかった。「セロン。降ろしてってば」 ベイラの声に、セロンはハッとして思い悩むのをやめた。いずれ思い出すだろう。 水晶球の中で夢を見ていたのかもしれない。
前にもそんなことがあったから。 セロンはベイラを見上げると、やさしく微笑んで言った。「今マントを脱ぐから、待ってくれ。これに触ると、火傷をするからね」 「じゃあ急いでね。まだキスもしてくれてないんだから」
彼はマントを脱いで近くの木の枝に掛けると、ベイラに手をさしのべた。彼女は本当に美しかった。抱きしめると、りんごとバラの香りがする。髪の毛は、うさぎの 綿毛のように柔らかい。
グレイロードの許可がおりるまで結婚を待たなければならないのは、セロンにはこの上もなく辛いことだった。大魔道土になるまでの辛抱だ。しかし、その道のりのなんと長いことか。「ああ、ベイラ」 セロンは、ベイラの髪を見つめてため息をもらした。
「一晩でいいから、君と一緒にいたいよ。でも、この旅は先生のお遣いだから」 それを聞いてベイラは、ちょっと眉をしかめた。 「あら、あなた、お父様の家に泊まるようにとグレイロード様がお言いつけになったって、言ってたじゃないの」
「そうだっけ」「そうよ。満月の晩に。忘れちゃったの」 やっぱり、何かがおかしい“。セロンは、こんな大切なことまで忘れてしまったのだろう、他にも忘れたことがあるはずだ。

1033:dm11
18/05/14 11:41:47.46 b2TJl7dA0.net
「本当だってば。お父様に聞いてごらんなさいよ。あなたは、うちに泊まることになっているのよ。ちゃんと用意もできているわ。あれをしまっておける、安全な場所も作ったわ- 咳みつかれるとでも思ったのか、
ベイラは、セロンのマントを指さすと、すぐに手を引っ込めた。ベイラが、このマントを怖がっていることをセロンは十分に承知していた。「君とお父上と一緒に過ごせるなんて、これ以上のことはないよ」 セロンは困惑を隠そうとして、
明かるくふるまった。ベイラは、この言葉のご褒美として、もう一度セロンにキスをした。「行きましょ」ベイラは両手で彼の手を握って引っ張った。「今晩はお父様のご招待よ。賢女様も、グレイロード様のヘナロープを
持ってきてくれているわ。それから、川のほとりで2人きりでお楽しみ 「そうまで言われちゃ、断れないね」 セロンはこのとき初めて、もう自分はただの男ではないということに気が付いた。自分は一人前の男であり、グレイロードの
名誉ある愛弟子であり、社会に貢献できる人間なのだと。よく自分の自慢をしていた母の言葉を思い出した。「まともな娘なら、放ってはおかない上玉さ」 しかし、今セロンが欲しいのは、ベイラただ一人だった。
その晩は、鹿肉とベイラの父親特製のビールという、豪華な食事を楽しんだ。そしてセロンは、ベッドの掛け金にマントを掛けて、深い眠りについた。その顔には、満ち足りた微笑みが浮かんでいた。 彼はその夜、すばらしい夢を見た。
ベイラとの結婚生活、グレイロードは山腹の小さな家を2人にプレゼントして、羊がたわむれ、美しい滝から水が流れ落ちる池まであった。グレイロードとって、これくらいのことは朝飯前だ。そしてに彼らの秘密を伝授する。
もちろん、伝授すると言っても遊び程度にすぎない。ハイロードの縁者と大魔道士の グレイロードだけが持つ秘密というものもあるからだ。

1034:NAME OVER
18/05/14 12:02:53.73 aHlvHP9fd.net
上げてまで連投とは

1035:dm12
18/05/14 12:08:50.93 b2TJl7dA0.net
秘密。セロンは眠りの中で自問した。ダンジョンを出発するときに、何があった。 何かの秘密だ。謎を解く鍵だ。そこで彼の夢は、輪郭を失い、突如として悪夢に転落した。全身を貫く、この世の ものとも思われぬ苦痛。
体が真ふたつに裂けるようだ。自分の悲鳴が耳の中で反響している。もだえ苦しむ肢体を、肉を、心臓を鋭い炎が貫いた。髪は燃え上がり、骨はけいれんした。これが死ぬということなのか。セロンは、まさに死を実感した。
気が付くと、セロンは焼けただれた雑木林の丘の上に立っていた。廻りの木々は、みなくすぶる炭になっていた。縮みあがり、だらりと垂れ下がった樹皮には、真っ赤なりんごや、みずみずしい、桃が実っていた頃の面影はない。
空は炎で真っ赤に染り、立ち込める煙はセロンの喉を刺した。村は廃虚と化していた。兵士が子供たちを追い掛け回している。村人の叫び声が、山々にこだましていた。そのとき、耳をつんざく雷のような音がとどろいた。
セロンは思わず目を固く閉じた。再び目を開けると、セロンの足はすでに地上を離れ、駆け抜ける軍隊を眼下に見下ろしていた。戦争、飢餓、疫病、どこを見渡しても悲劇と苦難に打ちのめされた人々 の姿が目に入った。
たまらなくなって、セロンは悪夢の中を駆け抜けようとした。焼けた木々の間を縫って、砲弾に掘り返された地面をかすめて、彼は飛び続けた。天が裂け、凍りつくような雨がセロンを打ちつけた。
強い風が、セロンを羽毛のようにもてあそんだ。マントの前を深く重ね合わせ、セロンは叫んだ。「先生、いけません。ひとりでなさってはいけません。やめてください、先生。私の帰りを待ってください」

1036:dm13
18/05/14 12:22:30.81 b2TJl7dA0.net
セロンはダンジョンの扉の前に立っていた。 「誰だ、私の夢に語りかけるのは」。セロンは振り返った。 『夢ではない』 「姿を見せろ」 『それはできぬ』 「見せろと言っているんだ」 マントの中から手を差し出し、
セロンは魔法の構えを見せた、そして、拳に魔力を集中させると視覚の呪文を唱えた。 すると一瞬、扉の前に光の球が現われたかと思うと、すっと小さくなった。セロンは視覚の呪文を繰り返すと、光の球は前よりも明るくなった。
これは、グレイロードの水晶球だ。見る間に、その球の中に白いぽんやりとした影が立ち上がった。 「セロン」 影はセロンの名を呼んだ。セロンは、3歩後ずさった。「先生、ですか」 「セロン」 再び声がすると球の光が増し、
その中にグレイロードの顔が現われた。セロンは思わず走り寄り、球に抱きついた。

1037:dm14
18/05/14 12:53:35.61 b2TJl7dA0.net
「先生、先生、いったい何が起こったのですか。これは夢なんでしょ。私はちょっと 前に眠りについて、そしたら……」 「そうじゃない」グレイロードはセロンを制した。おかしなことにグレイロードは、いつものグレイではなく、
白い着物をまとっていた。こころなしか顔が険しく見えるのは、そのためだろうか。それにしても、きつく結ばれた師の口許はまるで怒っているときのようだ。しかも、目は鉄のように無表情だ。「よく聞け。これは現実だ」
「夢じゃないって、なら、何だと、何だとおっしゃるんですか」 セロンはすっかり気が動転Lていた。 「落着け。ヒステリーを起こしている時間などないのだ」 グレイロードの声は厳しかった。 「すみません。先生」
セロンは透明な自分の体を見下ろした。「先生、これは何の魔法です。私たちはふたりとも、幽霊になってしまったのですか」 「パワージェムを取り戻そうとしたんじゃよ。愚かなことに、パワージェムを発見した喜びのあまり、
ビボルグの賢女のところヘヘナロープを取りに行くお前に、そのことを話してしまった」 「そうだ。思い出した。これだったんだ。これがどうしても……」 「シッ、黙って聞きなさい。そこでわしは、お前の記憶を消したのだ。
忠誠心のあまり、お前がわしと共に残ると言い張らないようにな。パワージェムの奪回は、命がけの作業だからな」「呪文を唱え始めたときだ。わしは唱え方を間違ってしまった、呪文のエネルギーを注いだとたんに、宇宙爆発し、
一年間、視力を失っていた」 「1年間」セロンは大声をあげた。 「私は1年間も眠っていたというのですか」

1038:dm15
18/05/14 14:07:14.93 b2TJl7dA0.net
眠ってなどおらん、私同様ふたつに分裂したのだ。だが、お前は直接爆発の現場にいなかった為、わしのように物質世界からはじき飛ばされはしなかった。わしは今天国とも地獄ともつかない異次元に存在している。私の体は、
この物質世界では半存在の状態とでも言おうか。お前のように世界を自由にうごけなってしまったのだ。そこで、お前の出番となる 「ヤツを阻止するのだ」「ヤツって?」 セロンは、流れ出しそ引こなった涙を抑えようと、
まばたきをした。自分が一人前の男だと感じたのはつい今朝のことだったのに、それが今では小さな子供のように泣きべそをかいている。なんということだ。「カオスだ、セロン」 師は拳を握りしめ、空を見上げた。
「爆発によって、わしから分裂したんじゃよ。言いにくいことだが、それは、わしの 悪心の部分なのだ。普段は気付かないが、狂暴で抑えられない自分というものを,誰でも持っているはずだ。しかし、わしの場合それが自由を勝ち得たのだ。
そして、今は悪事のやりたい放題じゃ。ヤツは、人類の文明を破滅させ、世界を我々人類が生まれる前の氷河の時代に戻すために、まずお前を支配しようと企んでいる」 グレイロードはダンジョンを指差した。「ヤツはダンジョンを占領して、
パワージェムを捜している。ファイアースタッフは ヤツの手中に落ちたが、パワージェムを解き放つ呪文は見つかってはおらん。その手がかりは実験室にあるんだが、ヤツにはわからないはずだ。爆発後に研究を見直した結果、
正しい呪文がわかったのだからな。それを知るのは、わしひとりなのだ」 「それで、私に何をしろとおっしゃるのですか、先生」 セロンは興奮してた。 師の影がビクリと震えた。 「まず、今からわしをグレイロードと思わぬこと。
すでに、その名前は捨ててしまった。リブラスルス。わしのことをこう呼べ」 セロンは、この名前に聞き覚えがあった。ハイロードが使用する古代の魔法用語で、”秩序を回復する者”という意味だったように思う。

1039:dm15
18/05/14 14:07:42.26 b2TJl7dA0.net
眠ってなどおらん、私同様ふたつに分裂したのだ。だが、お前は直接爆発の現場にいなかった為、わしのように物質世界からはじき飛ばされはしなかった。わしは今天国とも地獄ともつかない異次元に存在している。私の体は、
この物質世界では半存在の状態とでも言おうか。お前のように世界を自由にうごけなってしまったのだ。そこで、お前の出番となる 「ヤツを阻止するのだ」「ヤツって?」 セロンは、流れ出しそ引こなった涙を抑えようと、
まばたきをした。自分が一人前の男だと感じたのはつい今朝のことだったのに、それが今では小さな子供のように泣きべそをかいている。なんということだ。「カオスだ、セロン」 師は拳を握りしめ、空を見上げた。
「爆発によって、わしから分裂したんじゃよ。言いにくいことだが、それは、わしの 悪心の部分なのだ。普段は気付かないが、狂暴で抑えられない自分というものを,誰でも持っているはずだ。しかし、わしの場合それが自由を勝ち得たのだ。
そして、今は悪事のやりたい放題じゃ。ヤツは、人類の文明を破滅させ、世界を我々人類が生まれる前の氷河の時代に戻すために、まずお前を支配しようと企んでいる」 グレイロードはダンジョンを指差した。「ヤツはダンジョンを占領して、
パワージェムを捜している。ファイアースタッフは ヤツの手中に落ちたが、パワージェムを解き放つ呪文は見つかってはおらん。その手がかりは実験室にあるんだが、ヤツにはわからないはずだ。爆発後に研究を見直した結果、
正しい呪文がわかったのだからな。それを知るのは、わしひとりなのだ」 「それで、私に何をしろとおっしゃるのですか、先生」 セロンは興奮してた。 師の影がビクリと震えた。 「まず、今からわしをグレイロードと思わぬこと。
すでに、その名前は捨ててしまった。リブラスルス。わしのことをこう呼べ」 セロンは、この名前に聞き覚えがあった。ハイロードが使用する古代の魔法用語で、”秩序を回復する者”という意味だったように思う。

1040:dm16
18/05/14 14:21:02.03 b2TJl7dA0.net
「わかしました。リブラスルス様」 セロンは頭を深々とたれた。 「忠誠を誓います」 「よろしい。これで十人力だ。お前はわしの手となり足となって、また、目となり耳 となってわしを助けるのだ。とにかく、ファイアースタッフを
取り戻さない限りわしはダンジョンの中に入ることができない。あの爆発以来、わしはこの場所にしか現われることができないのだ。このダンジョンの扉の外にだ。反対に、カオスはダンジョンから外にでることはできん。ヤツとわしは
ここに存在していながら、存在しない。お前の使命は、この場所ヘファイアースタッフを持ってくることだ」 セロンは唇をなめた。 「しかし、どうやってダンジョンに入るのですか。私にも実体がないのですよ。半存在の身です」
リブラスルスはうなづいた。「それも道理だな、セロン。そこに気付くとは、さすがは我が弟子だ。だが、お前には、わしにはとれぬ行動をとることができる。 ロードカオス、ヤツは自分をこう呼んでおるんだが、それを倒すために、
どうしても必要な行動だ。今では、ヤツがこのダンジョンの主だ。お前は、わしのためにそれを取り戻すのだ」 「ダンジョンを、ですか」 揺らめく水晶球の中の師を、セロンは目を細めて見つめた。「ファイアースタッフだ。何度言わせるのだ。
それがあれば、わしが自らダンジョンに入り、パワージェムを取り返すことができる。そして、カオスを倒してこの世界は再び秩序を取り戻し、生まれ変わるのだ」「でも……」 「これ以上ここにはおれぬ。わかったな。
あの大惨事の後多くの勇者をダンジョンに送り込んだ。あわよくば、ファイアースタッフを取り戻すかと期待してな。しかし、残念なこと 「全員……」 「いや、数百人といったところだ。一人の勇者の命で数十万の命が助ければ
大した犠牲ではなかろう。修練が足りなかったのだ、 彼らは仲たがいをし、宝を見つけては足を止めた。だから命を落としたのだ」

1041:dm17
18/05/14 14:33:25.00 b2TJl7dA0.net
セロンの心は凍りついた。我が師とあろう方が、こんなに恐ろしい話を事もなげに語るとは。それにしても、その顔の疲れ切ったこと。どれほどの苦痛に堪えてこられたのだろうか。多分、先生は、あまりにも重い罪の意識に堪えて
生きるために、自らの感情を断ち切ってしまわれたのだろう。「それは当然の結果です」 セロンは師に同意した。「ロードカオスは、勇者の間と呼ばれる部屋に死んだ勇者のうちの24人を吊るしたのだ」 師の顔が一層険しくなった。
「つまり、ヤツのしとめた獲物というわけだ。カオスは、その勇者たちを魔法の鏡に閉じ込めた。彼らはその中で身動きもできず、生きているとも死んでいるともつかない状態で飾られているのだ。わしに代わって戦おうとする勇者に
向けたカオスの警告という意味もあるのだ」 リブラスルスは、水晶球の中で動き回っているように見えた。「お前の高度な知識と技をもってすれば勇者の間に入り、彼らを眠りから覚ますことができる。わしも、いくらか手助けができるはずだ。
ただし、4人までだ。お前は4 人の勇者を蘇らせることができる。彼らにはお前の存在はわからぬが、お前の力と 知識を使って彼らに正しい方向を暗示し、ファイアースタッフのある場所まで導くのだ」
「どの勇者に新しい生命を与えるかは私の判断だ責任重大だ」 セロンは、力なく師に問いかけた。「彼らの生命力を利用して、自分の好みの勇者に改造することも出来るぞ、 師の話し方は、まるで物でも扱うようだった
「何ですって」 セロンは目を見開いた。 「そう、その力をお前に授けようというのだ。 自分の分身として働かせるのに都合がいいと思かもしれない、また力よりも頭の切れる者を必要とするかもしれない
好きなように作り直せばいい

1042:NAME OVER
18/05/14 19:58:20.39 T38rPkHt0.net
>>991
良いこと言います

1043:NAME OVER
18/05/14 22:55:26.45 Mr3rUYyA0.net
俺は正負の法則なんて絶対に信じないけど、連投野郎が病気なのはわかる

1044:NAME OVER
18/05/14 23:00:05.59 Mr3rUYyA0.net
あ、代償の法則ね
まぁどっちにしろ非科学的なものは信じないけど

1045:NAME OVER
18/05/15 10:14:23.11 cBPvQ9IRa.net
うめとこ

1046:NAME OVER
18/05/15 11:40:39.48 K12M5CA+0.net
埋め

1047:dm18
18/05/15 13:33:44.66 oXJDIeLS0.net
「そ、それはほとんど、神を冒とくする行為じゃありませんか」 リブラスルスは、その言葉が聞こえなかったふうを装った。 「お前は、今わしがお前にそうしているように、実体のない魂となって勇者たちを導くのだ。この世界で実際に
体を動かすのは彼らだ。彼らは、まだ、この世に籍を置いている。さあ、一刻の猶予もならん。ダンジョンに入り、救世主たちを呼び覚ませ。よく考えて選ぶのだそ。その者たちに、運命がかかっているのだからな」 「いったい、とうやって
選べというのですか。彼らは、これからどんな目に遭わされるんですか」 セロンは困惑するばかりだった。「ロードカオスは、私の実験をめちゃくちゃにしおった。わしの美しい論理の世界をねじ曲げ、危険この上ないパズルに変えてしまった。
そのうえ、わしの顔に唾を吐きおったのだ。このパズルをすべて解かないことには、目的は達せられん。彼は、様々な怪物も生み出した。ダンジョンから逃げ帰った者の話では、カオスに捕えられ怪物に改造させられた勇者もいるとのことだ。
そうだ。わしがお前を送り込もうとしているところは、まさしく地獄だ。しかし、これ以外に方法はないのだ」 突然、水晶球が砕けちった。セロンはとっさに顔を覆いながら、叫んだ。 「どうやって選ぶんです。どうしたらいいんですか!」
水晶球の破片が地面に降り注いだ。風の中から師の声が聞えてきた。『ダンジョンに入れ。眠れる勇者を見つけるのだ。その魂を覗き、その能力を確かめるのだ』 『確かめるのだぞ』

1048:dm19
18/05/15 13:37:42.36 oXJDIeLS0.net
セロンは見た。 心を扉の向うに送り、入り組んだトンネルをさまよい、勇者の館を捜し当てた。真 っ暗だ。その闇の中を、殺意と絶望が、ぼんやりと光を放って漂っている。 それは、死のオーラだ。 冷たく陰気な壁面に、
24個の鏡が掛けられていた。その中に、勇者たちが眠っている。男、女、小人、妖精、トカゲ男や犬人間のような、セロンがこれまでに見たこ ともないような生き物も交じっていた。セロンは、勇者たちのうつろな視線を感じた。
助けて。ここから出して。彼らはそう叫んでいるようだった。セロンは、妖女の前に立ち止まった。彼女はベイラに負けず劣らず美い、。しかし、 亜麻色の長い髪に包まれた肉体は強靭な戦士としての肉体だった。
肩から白いガウンが落ちそうになっている。セロンは思わず手を差し伸べ、ガラスの中の彼女の体に触れた。

1049:dm20
18/05/15 13:44:51.05 oXJDIeLS0.net
苦痛に張り裂けんばかりの悲鳴がセロンの鼓膜を突き刺したのは、そのときだった。 セロンはほら穴にいた。石が、松明が、4つの人の形をしたものが、彼の体をすり抜けて落ちていった。すべてが地面に落ちると、
それらは大きな瓦傑の山を作った。 白い髭をたくわえた老人の背中の上に、太い木の梁が倒れかかった。老人は悲鳴を 上げ、次の瞬間静かになった。エルフは、腰布を着けた大柄な若者の真上に落ちて きた。もう一人の男は、
衝撃から身を守ろうと丸くなったまま落ちてきた瓦傑に埋 もれてしまった。 「シーラ」 若い男が叫んだ。ブロードソードが彼のこめかみに当たり、彼は気を失って前に倒 れてしまった。 セロンも墜落の衝撃に備えたが、
彼は落ちることなくその場に浮かんでいた。なす すべもない、もどかしい傍観者だった。眼下に展開している眺めは、過去のものな のだ。どうやら彼は、24人の勇者たちが殺されていく様を見なければならないのだ。
なんと残酷な任務であろうか。 白髭の老人は、その衣装から予言者であることがわかった。筋骨たくましい男は、見 るからに野蛮人だ。もう一人は、どうやら盗賊らしかった。彼のベルトに巻き付け られた皮の袋がはち切れ、
大小の宝石が地面にこぼれていた。勇者の館で見た、あの美しい女性は、大丈夫だろうか。彼女の手が伸びた先には、樫の杖が横たわっていた。杖には、樫の林の番人を表わす紋章が入っている。セロンの魔法の樫の木が植わっていた林だ。
今はもう焼けただれて、何も残っていないが。 しばらくして、梁の下敷になった老人がかすかに動いた。 「シーラ」 老人は、声をふり絞った。 彼女の返事はない。セロンは息を呑んだ。が、そのとき、彼女はうめいて、目を開いた。
「ナビ」 彼女は老人に駆け寄り、梁に手をかけた。彼女の手から、血がにじみ出た。 「ハルク、アレックス、手を貸して」 ナビと呼ばれた老人は、大きく息を吸い込んだ。

1050:NAME OVER
18/05/15 13:50:26.50 NQNZ7lDOd.net
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1051:1001
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