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コラム:「大胆な経済対策」で日本は悪循環突入か
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<「ヘリマネ」と本質的には同じ図式>
このように今回の経済対策は、総じて好ましいように見えるが、中長期的には問題が多い。第3の矢である成
長戦略の推進が道半ばであるにもかかわらず、再び第2の矢(財政政策)が打ち出されたことで、日本の産業
構造の転換が遅れるリスクが高まった。
5月の有効求人倍率が1.36倍と1991年9月以来の高水準に達するなど、日本経済の人手不足感が強まっ
ているなか、今回の経済対策で生産性が低い建設業に労働力がさらに投入されれば、他産業での労働不足を通
じ日本経済全体の生産性向上を妨げるだろう。
建設業に長く従事すればするほど、他産業への移動が難しくなる傾向にあることから、経済対策の効果が剥落
するとともに建設業に未稼働労働力が滞留する恐れも高まる。その結果、失業対策としての公共事業が続けら
れ、日本経済の建設業への依存度が高まり、国際競争力がさらに低下する事態も考えられる。
安倍首相は11日の記者会見で、ゼロ金利環境を最大限に生かし、財政投融資を積極的に活用すると述べ、財
投貸出金利を0.1%から0.01%程度に引き下げる意向を示した。これにより財政投融資の拡大が見込ま
れるが、小泉内閣から縮小傾向にあった政策金融が再び肥大化する恐れも高まった。数少ない有望産業と見ら
れている金融業で公的機関による民業圧迫も懸念される。
今回の経済対策では家計への現金や商品券の支給は見送られるようだが、日銀が償還時の損失を容認しながら
日本国債を買い入れるなか、日本政府が国債増発で歳出を拡大する図式は、昨今話題となっているヘリコプタ
ーマネーの図式と本質的に変わりはない。今回の経済対策が(短期的に)うまく行けば行くほど、その効果が
剥落するであろう1年後くらいに(本質的にはヘリコプターマネーと変わりがない)新たな経済対策が過去の
成功体験を根拠に打ち出されるだろう。日銀の金融緩和が出口に向かうことは今後数年、考えにくく、時間と
ともにヘリコプターマネーへの依存度が高まることも十分に考えられる。
日本の潜在成長率は、大規模な移民受け入れが容認されることがなければ、労働力人口の減少という低下圧力
を受け続けることになる。潜在成長率の低下に歯止めをかけるカギは、資本ストックの拡大と全要素生産性
(TFP)の上昇だ。
だが、公共投資の積み上げは、短期的には資本ストックの拡大につながるものの、公的部門の依存度が高まる
ことで民間部門による自発的な資本ストックは抑制されるだろう。今回の経済対策の実施で成長戦略によるT
FP上昇も期待しにくくなった。
こうなると、潜在成長率の低下が続くことになり、金融緩和による景気押し上げ効果も弱くなる。結果として、
財政拡大に対する依存度が高まり、潜在成長率の低下はさらに続く。中長期で見た日本経済は悪循環に陥った
のかもしれない。