06/07/05 16:52:11 2VkvB6j8.net
「おまえ金入れろ」
おっちゃんはそう言った。
言われるまま、俺は袋から金を取り出し投入口へ入れた。
いままでは脇から見ているだけだった、それが今日は金を入れるという役割を担った。
なんだか共同作業をしているようで、すごく嬉しくなった。
その日のおっちゃんは、いつも以上にリアクションを取りながら麻雀をしていた。
CPUに振り込むたびに、なんだそりゃ!、とか、ふざけんな!、とか言ってた。
時々怒って台を叩いていたおっちゃん、そんなおっちゃんが、その日は何故か笑みを浮かべながら麻雀をしていた。
「こんなのありえねーよなぁ、おい」と言って、俺の方へ二カッと笑って顔を向ける。
俺も、意味は分かってないが「ありえねー」と言って笑う。
いつも以上に俺は、おっちゃんに寄り添って画面を見ていた、おっちゃんが大好きになってた。
何度も負け続け、その度に金を入れる俺。
やっとの思いで一人目をやっつけ、二人目との対戦に入る、そこからはいつもの通り。
一回は勝つと、必ずその後は負け続ける。
暇になって、俺が台の上に積み上げた百円玉の塔も、どんどんと低くなっていく。
残り三枚くらいになってから、おっちゃんが興奮し始めた。
よく分からなかったが、凄い手を上がれそうだったらしい。
「こい!こい!」
そう言いながらゲームを続けるおっちゃん、俺も横で真似して「こい!」と叫んでいた。
が、結果は負け。
俺は咄嗟に身構えた。
いつもおっちゃんが怒って怒鳴るパターンだったから。
おっちゃんは一瞬黙り込むと、予想に反して俺の頭に手を乗せた。そして
「ま、しゃーねぇわな」と苦笑いを浮かべていた。
「おっちゃん次いこーぜ!」そう言って残り少ない百円玉を入れる俺に、「よっしゃ」と答えるおっちゃん。
なんだか二人して妙にテンションが上がってたなぁ。
おっちゃんがスタートボタンを押す。画面に女に人が出てきて何か喋る。
そして画面に麻雀の牌が並べられる。いつもの通り。
二人して、やたらと力を入れて画面を見ていたその時、相手の女の人がこういった。
「ツモ」
俺もおっちゃんも呆気に取られていると、いきなり結果画面が出てきた。
バーン!と音がして、見たことない高い点数が表示され、プルルルル・・・っとおっちゃんの点数が見る見るうちに減らされていった。
そして直ぐに、ゲームオーバーの画面。そしてタイトル画面に戻っていった。
しばらく俺もおっちゃんもタイトル画面を黙って見ていた。そしてお互い目を合わせて、一気に爆笑したんだ。
おっちゃんの笑い方はすごく豪快だった。俺も負けじと大笑いした。