16/11/24 17:57:49.91 4T7wYzUj0
「赤ごっぱちゃん赤ごっぱちゃん目をあけて!神様お願いしまち、赤ごっぱちゃんを助けてくだち!」
母ゴーヤは必死に願うも現実は現実だ、何も変わりはしない。 結局無駄に終わった。
その時、ヤンキーの一人がこっちに振り返った。声で気づいたのだろう。
「いたいた、母ゴーヤだぜ。てっきり死んだかと思ってたよ」
「おいみろよこのゴミ袋!たぶんどっかから盗んできたんだろうぜ!」
「惨めだなあオイw!!」
片方が持っていた血に赤く染まったバットが母ゴーヤの恐怖を煽る。
すぐさま一人が立ちすくむ母ゴーヤの手からゴミ袋を奪い、母ゴーヤの制止も聞かずに地面に叩きつけ始めた。
「オラッ!オラッ!!オラァッ!!!」
「デチャア!デチャアアアアアア!!」
ゴミ袋は何度も地面に叩きつけられアスファルトやコンクリートの壁に違う意味の花を咲かせる。
家族と食物を壊された母ゴーヤは非常に憎悪し睨み付けた。なんだかんだでオリョクルをしまくった提督以外、他者を恨んだりしたことはなかったのだ。
「もう…もう許さないでち……!」
だがそれが彼らには不快そのもので頭に飛んできたのは実でなく足蹴りだった。
「デギャア!デゲエッ!デギャエッ!」
情けない悲鳴を上げる母ゴーヤ。
「ははは!おもしれえ!そうだ、あれ生きてねえか?」
「おう、まってろ」
投げ出された赤ごっぱに向け必死に這いずる母ゴーヤの前にあるものが投げつけられた。 子ゴーヤだった。
「片方は死んだけど、こいつは生きてるよ。じゃあな!ゴミ以下の珍獣!」
子ゴーヤを乱暴に解放し、ヤンキー達は姿を消した。
ぐったりしている子ゴーヤに駆け寄り抱き締める母ゴーヤ。
「……チィ…で……ち…」
「子ゴーヤちゃん!?よかったでちぃ!」
生きていてくれた事に安堵した母ゴーヤ。彼女はすぐに体を調べた。
引き摺られたであろう傷は酷く、全身擦り傷切り傷抉れ傷、耳はちぎれかけていた。
酷いのは顔だ。片目は内出血起こし、瞼もズルズルになっていて、さらに裂けた唇からは真っ赤な歯茎が見え、奥歯以外の乳歯全て抜けていた。
「まっててくだち!すぐにすぐに助けてあげるでち!」
そう言って母ゴーヤは介抱しようとした。まさにその時だった。
彼方からは大きな音と光と共にいつも見る車の数倍は大きい車が近づいていた。
某重工の大型トラックだった。
「ママァ…」
「待っててね子ゴーヤちゃん、ママがママが必ず守るから心配しないでくだちぃ」
「ママァ…ママァ…」
「子ゴーヤちゃん…子ゴーヤち―」
轟音に声はかき消された。
大型トラックは気にするわけもなく走り去り、排気ガスが晴れると道路には二匹の肉片と真っ赤な臓器が叩きつけられた実のように広がっていた。
数時間後、市民から連絡を聞きつけた市の清掃員が連絡を聞きつけやってきて、二匹の死骸をきれいに清掃した。
完