16/06/28 21:48:20.34 Cqyb+sAm0
「これで勘弁してくだち! もう離してくだち!」
笑いがピタリと止んだ。558号の必死の懇願が届いたからではなく松田が怒ったからである。
「……だな。おい山岡、離してやれ」
自分を縛っていたロープが解け、ようやく自由になった558号は
心の中でそっと息を吐いた。
その油断につけ入るかのごとく、松田の拳がイカ腹に突き刺さった。
文字通り、鋼のように硬く重い一撃に、558号は吐瀉しながら地に伏せた。
息ができない。臭い。恥ずかしい。混濁した意識が奴をさらに苦しみへと陥れる。
「デボェェェェ! デブヒィィィィィィ!」
蹴りや拳が何度も何度も558号の体中を襲う。
そのたび何度もゲロを吐き、床を汚していく。
頭を松田と山岡に踏みつけられ、自分の尿と吐瀉物の池に顔を突っ込む。
呼吸ができず、じたばたともがくが、二人は力を緩めない。
(殺される ...死にたくない ....それだけは嫌だ .....)
「はあ、はあ、今日はこれくらいにしといてやる。もし明日以降ふざけた態度をとりやがったら、本気で腕の一本二本切り取るからな。覚えとけよ珍獣」
二人の足が離れ、解放された558号は僅かに顔を浮かせて必死に空気を吸い始めた。
「じゃあ、俺は外行くからこの珍獣の教育頼むぞ」
「おう、お疲れ様」
威勢のいい山岡の声を背に、松田は特別房を出ていった。
「オラ、さっさとその汚ねえもん片付けろ!」
山岡に尻を蹴飛ばされ、唾を吐きかけられても、558号はしばらくそこを動かなかった。
不甲斐なさと惨めさからくる涙と、醜く汚れた悪臭のする顔を彼に見られたくなかったからだ。
完?