16/03/08 21:25:33.26 nv0pWbqy0.net
キタローの朝は早い。
毎朝午前6時30分に起床して1階で朝食を摂り、身支度を整えて学校へと向かう。
アイロンの利いたYシャツにボウタイを締め、ボタンを一番上まで止めて、品良く制服を着こなすと思われている
キタローだが、彼には誰にも見せたことのない朝の習慣があった。
起床してすぐにキタローは部屋に備え付けられた鏡の前に行き、顔を洗うのだ。その後、顔についた水をタオルで
拭きとり、鏡で自分の顔を見る。
このときの顔は学校でいつも友人や仲間に見せている顔とは少し違った。右目尻に目立つ泣きホクロがポツンと
白い肌の上でその存在を主張していた。
「どうでもいいけど、泣きボクロだと女の子っぽい感じがするんだよな……」
そう呟いて、洗面台に置かれたスティック型のコンシーラーを持ち、慣れた手つきで右目尻の泣きホクロを
塗りつぶしていく。たちまち赤みの強いベージュ色でホクロが覆われた。その上にキタローの肌の色に合った明るい
色のコンシーラーを重ねた。遠目では分からないくらいに綺麗に隠れた。
そして櫛を青い髪に入れ、長い前髪を右目の前に垂らす。キタローがキタローと呼ばれるメカクレの髪型だが、
わざわざこんな風にするのは化粧の跡を隠すためだった。
よし、と言ってキタローは櫛を置き、ドアを開けて部屋から出て行った。
よく中性的な美少年と評されるのだが、キタロー自身はあまりよく受け取っていなかったりする。『僕って男らしく
ないのかな?』そう悩んでいた。
少しでも男らしく見せたいと思い、ジャケットのジッパーを開き、ゴツゴツしたエンジニアブーツを履いているのだ。
そんなキタローの努力を知る者はいないがどうでもいい、と彼は思っている。