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あるじを失った「チャーム」の店内。時折、常連客らが弔問に訪れる
食事は250円のカレーライスと300円のスパゲティだけで、メニュー表や看板もない角田市の喫茶店「チャーム」が7月、マスターの伊藤健一さん(81)の急逝で半世紀以上の歴史に幕を閉じた。常連たちは「ワンコインで幸せを味わえたいい店だった」と残念がる。
人気はカレーとスパゲティのミックス、常連客「ワンコインで幸せ味わえた」
カレーライスを手にする生前の伊藤さん
伊藤さんが20代のころに開店。一時、アルコールを提供するスタイルに変えたが、ツケ払いを認めていたら経営難になったため、以降は喫茶店として営業をしていた。
カウンターとテーブルで計15席ほど。数十年前に派手な看板を撤去してから代わりの看板を置かず、客は出窓から見える明かりで営業中かどうか確認した。
カレーとスパゲティの「ミックス」
メニューはフォークで食べられるほど粘度の高いカレーと、軟らかめスパゲティの2種類。ミックス(500円)が人気だった。スパゲティは伊藤さんの気分でナポリタン風の「赤」か塩味の「白」が出た。まれにチャーハンも提供した。しばらく前にカレーを50円値上げした以外、値段は変えていなかった。
「『多少は金もうけも考えて』と言うと『金は一番じゃないんだ』と怒られた」。妻の憲子さん(75)は笑う。
毎日午前3時に起床。スパゲティをゆでた後、阿武隈川の土手に行き、若いときから続ける円盤投げの練習をした。マスターズ陸上に毎年のように出場、陸上仲間と会うことが何より楽しみにしていた。
円盤投げをする若かりしころの伊藤さん
マスターズ陸上で獲得した数多くのメダル
過去には「旅に出る」と2、3カ月帰らず、徒歩や自転車で全国を回っていた。憲子さんは「時間を目いっぱい使う人。目まぐるしくて一緒にいて飽きなかった」と振り返る。
豪快に見える半面、皿は煮沸消毒し、客の体調を察して塩加減を調整するなど気配りの人でもあった。近年は地元客の他に、インターネットで店を知った人々が訪れた。
6月上旬に自転車で転倒し足を捻挫。しばらく営業を続けたが風邪で寝込み、肺炎を患った。7月9日、帰らぬ人となった。
常連だった雲走(くもそう)和則さん(52)=角田市=は「年だけど食べたい人がいるからまだ頑張るんだ、と言っていたのに」と惜しんだ。
河北新報 2023年8月8日 6:00
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