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毎日新聞 2021/12/5 17:25（最終更新 12/5 17:25） 有料記事 3160文字
膵臓（すいぞう）や胃、乳房などのがん治療に幅広く使われる2種類の薬の供給が、昨年から相次いで不安定になっている。いずれも工場で衛生管理上の不備が見つかり製造が止まったことが原因だが、代替の製造拠点や調達先がなかったことが供給不足に拍車をかけた。命にかかわる医薬品の安定確保に課題を残した。【小川祐希】
患者の不安「治療を続けられるのか」
乳房や胃、肺、膵臓の各がんの治療に使われる抗がん剤「アブラキサン」の国内での供給が、今秋から滞っている。「このまま治療を続けられるのだろうか」。仙台厚生病院の消化器内科医である斎藤宏章さんは、先行きが見通せず不安がる患者の思いをこう代弁する。
アブラキサンは、米製薬大手ブリストル・マイヤーズスクイブの子会社が製造する抗がん剤だ。日本では大鵬薬品が2010年から輸入・販売し、年間4万人が使用している。膵臓がんの化学療法では最初に使われる薬の一つで、特に重要度が高い。胃がんなどでは代替の治療薬があるが、アルコールが含まれているため患者の体質によっては使えない。
大鵬薬品は8月、アブラキサンの供給が10月から不安定になり「一時的に欠品する可能性が出てきた」と発表した。この薬は、米国にある二つの工場で製造されている。同社の唯一の調達先はアリゾナ州の工場だが、そこで実施された無菌状態を確認する定期的な試験で異常が発見された。その後、輸入先企業に他国向けの在庫を融通しても…
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