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毎日新聞2020年4月1日 11時43分(最終更新 4月1日 11時47分)
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「おかあさん、これまでありがとうね」との常連の声をうれしそうに聞く、おかあさん=伊勢市吹上の日吉屋で2020年3月31日午後0時50分、尾崎稔裕撮影
三重県伊勢市吹上の裏通りにある老舗たい焼き専門店、日吉屋が31日、68年間の営業の幕を閉じた。次々に訪れる常連たちは、たい焼きの入った熱々の紙包みを受け取りながら「ほんとに、ほんとにきょうで最後なん?」「お疲れ様。今まで、ありがとね」と閉店を惜しんでいた。
毎年10~3月の半年間の限定営業。はさみの先端に1匹分の焼き型がついた「一丁焼き」と呼ばれる鉄製器具7丁を使って、おかあさん(75)がひとつずつ焼き上げる“天然物たい焼き”。パリッとしたきつね色の香ばしい皮、たっぷりの北海道アズキのつぶあん。味はもちろん、おかあさんの伝法な口調を多くの常連たちが愛した。
いつもなら焼き上がりを待つ行列ができる午後1時前あたり。営業最終のこの日、店の前には誰も並んでいない。「ここんとこ予約の分だけで手いっぱいでな。いま注文してもらっても売る分はないでな」とおかあさん。矢継ぎ早に投げつけられる乱暴な口調に驚く人も多いが、常連たちは柳に風で受け流す。
「えーっ、もう売り切れかね」と声を上げたのは、3代続く同店ファンという市内の女性(68)。「ウチはおばあちゃんの代から、ずっとここ。しっかり豆の味がする、つぶあんがおいしくてね」と残念そう。「長いこと、おいしいたい焼きをありがとうね」と、おかあさんに手を振って店を後にした。
千秋楽らしく、店には常連から花が次々に届く。「お疲れ様でした」「おかあさんの声が聞けなくなるのが、さみしい」「これまでありがとう」などのメッセージを書いたカードや手紙も添えられている。
閉店の理由を聞くと「元気なうちに少しはゆっくりしたいからな。カネもたまったし。あ、貧乏な新聞記者にはわからんやろ」と、おかあさんは大笑いした。【尾崎稔裕】