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三代目弘道会が山口組六代目の鶴の一声で急速に山口組内の要職ポストに就いた頃、
三重県内のとある信用金庫と愛知県内に本社を構える大手中古車オークション会社を舞台にした巨額融資の話が持ち上がった。
融資金額は約100億円。
このうちの何パーセントかが暴力団の資金として流れるわけだが、
この融資話の仕掛けがはじまってから、山口組幹部たちの間で「そんなことができるのか？」という声があがりはじめた。
山口組の中には、武闘派だけではなく経済方面の経験と知識に明るい経済ヤクザも在籍している。
それは、ありもしない架空財宝を売り買いして利益を得ようとするＭ資金詐欺レベルぐらいのお粗末さではないかと感じた幹部たちも多くいた。
いつしか、幹部たちは、不安とは違う悲しい気持ちになった。
この融資話を先導していたのは、かねてから信用金庫と大手中古車オークション会社と関係の深い三代目弘道会である。
三代目弘道会会長は、六代目山口組内でも若手ナンバーワンと言われ、「いずれは山口組の組長に」という声も各所からあがるほどの人物である。
その興味の根源には「噂通り、山口組組長になりうる資質があるかどうか」という意味合いも強くあった。
あらためて冷静になってみると、この融資計画はまるでM資金詐欺のようなペテンレベルであった。
仮にも将来の山口組組長候補とまで目された人物が、
詐欺師やブローカーレベルの経済手腕では、「資質としてどうなのか？」という大きな疑問を持たれてもしょうがない。
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