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秋田県の南部に松尾芭蕉の『おくのほそ道』で知られる象潟(きさがた)がある。芭蕉がここを
訪れた江戸時代前期の1689年当時は「潟」の名で分かる通り、湖状の入り江だった。そこに
島々が浮かぶ姿は、松島と並ぶ絶景といわれた。
▼ところが一世紀あまり後の1804年に起きた大地震で約2・4メートルも隆起、水面は一夜
にして野と化す。その後は水田の中に島の跡の小さな丘が点々とする、という芭蕉が見たものとは
別の景色となった。地震の持つ力のすごさを見せつける形状である。
▼M8・8という巨大地震は、それよりもはるかに大きい力で東日本を襲った。昨日も書いた
大津波だけではない。恐らく地盤の大変化も加わり、全体が水没したり壊滅状態になったりした街
がいくつもある。丸一日以上がたっても被害者数も被害額も想像がつかない惨状だ。
▼それにしてもこの巨大地震は専門家の「常識」を超えるものらしい。大地震の後に余震が続く
のは不思議ではないが、今回はその余震のたびに震源地が大きく異なり「南下」している。昨日
早朝の長野県北部などの地震も誘発されたものという見方が強い。
▼そんな遠くの揺れを誘発したとすれば、常識はずれの魔物だ。地震国日本ではこれまで、
科学の力を結集しながらその正体の解明と予知に取り組んできた。ではあるが、まだまだその魔性
を十分には理解していないと言わざるをえない。
▼それでも発生以来、不眠不休で魔物の爪痕と戦っている自衛隊、警察、消防などの関係者には
頭が下がる。特にこの政権から疎んじられがちだった自衛隊の力なしには、状況をつかむことすら
できない現実がわかったはずだ。ともかく一人でも多く救出してほしい。
▽産経ニュース
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