08/05/18 00:22:09
硫化水素を使った自殺が相次ぐなか、インターネットを使って自殺防止や命の大切さを訴える動きが広がっている。自殺願望者
の多くがネットで自殺の方法を調べているからだ。大手検索エンジンでは自殺関連のキーワードを書き込んだ場合、検索結果
ページの上部には自殺防止に取り組むサイトが掲載されるようになった。3月下旬以降、全国で100件を超えた硫化水素自殺。
自殺で最愛の家族を失った遺族や自殺未遂の経験者も呼びかける。「1人で悩まないで。少しでも力になりたい」
(中略)
■「生きていてよかった」
千葉県に住む男性(45)が自殺を図ったのは、41歳のときだった。
彼は30歳過ぎから自宅に引きこもっていた。人の目につく日中は一歩も外に出ず、部屋から出るのは深夜にコンビニに行く
くらい。父親から渡された金でパチンコだけをする日々だった。
「今思えば勉強も遊びもできる環境だったのに実際は何もしていなかった。漠然と『金がなくなったら死ねばいい』と思っていた」
金が底をつき始めると、死は現実味を増した。飛び降りがいいか、首つりがいいか。自殺の方法を考えることで時間をつぶし、
夜中には自転車で飛び降りやすそうな高層ビルをチェックして回った。ビニールひもで作った首つり用のひもは、何本作ったか
覚えていない。
所持金が数百円になった年末、最後にたばこを買った。深夜、行きつけのパチンコ店の立体駐車場に行き、買ったばかりの
たばこを吸った。転落防止用のさくを乗り越え足を空中に踏み出そうとした瞬間、たまたま駐車場に入ってきた車のライトが光った。
「やっぱり死ねない」と思ったのはその瞬間。車が入ってこなかったら、間違いなく飛び降りていた。
10年ほど会っていなかった母親と連絡を取り、同居を始めた。引きこもり支援をするNPO法人が自宅に来るようになった。
そのNPO法人が主催する四国お遍路巡りに参加することを決めたが、期日が近づくに連れて眠れなくなり、初めて心療内科を
受診した。
家庭の問題や自殺未遂のことを含め、カウンセラーにすべて話したら不思議なくらい楽になった。お遍路から帰ると不眠症も
治っていた。
「自分のことを洗いざらい話せる人ができたのが大きかった」
悩みは人それぞれだが、その悩みを分かってくれる人も必ずいる。「人に悩みを話せないときは自分から他人との間に距離を
作っていた」。今ではそう思う。
彼は今、自分を救ってくれたNPO法人で働く傍ら、介護福祉士の資格を取るための勉強を始めた。お年寄りと話をしていると
毎日が楽しいという。
「歯車はひとつ回ると、周りの人が次の歯車を回してくれる。でも最初の歯車は自分で回さないと回らない」
彼にとって、自分の悩みを他人に洗いざらい話すことが最初の歯車だった。死にたくなるくらい落ち込むときがあっても、今では
自然に誰かに相談できるという。
「生きていてよかった。今ではそう思います」
■「問題解決」情報を共有
自殺防止サイト「生きテク(URLリンク(ikiteku.net))。昨年9月に立ち上げたサイトには、読者を取材するなどして得た約100個の
「生きるための問題解決ノウハウ」の実例が掲載されている。アクセス数は毎月10万ページビューを超えている。
実例は「過労」「いじめ」など8分類されており、それぞれ苦しかった状況やどうやって解決したかなどを掲載。家事や育児に
疲れた女性は東北の牧場に一人旅をし、大自然の中でストレスが一気に抜けていった経験を書いている。
「『生きテク』は壮大なおせっかい。昔、近所にいた、何でも相談できるオヤジさんのようなサイトを目指したい」。同サイトの
オキタ・リュウイチ代表(32)はそう説明する。
自殺願望者の多くはネットで自殺方法を調べていることから、大手検索エンジンも対策に乗り出している。
総合情報サイト「Yahoo! JAPAN」は昨年末、国立精神・神経センター自殺予防総合対策センター(東京都小平市)と連携。
「死にたい」「楽な死に方」などのキーワードで検索した際、同センターのサイトへのリンクを検索結果ページの上部に掲載する
ことにしている。
さらに硫化水素自殺の報道が増えた今年4月下旬からは、「硫化水素 死に方」などでも同様の検索結果ページが掲載される
ようになった。同社は常にキーワードの見直しもしており、現在では数10個のキーワードがあるという。
ソース(MSN産経ニュース) URLリンク(sankei.jp.msn.com)