08/02/05 23:31:27
人権擁護法案を通常国会に提出する動きが政府・与党内に出ている。
人権侵害を救済するための人権委員会創設を目指すが、メディア規制などをめぐり報道側からの批判は強く、法案をめぐる与党内の評価も真っ二つだ。議論の行方は依然、見えてこない。
◆保守派「阻止」
◇国籍条項に反発、一部に柔軟意見も
人権擁護法案の再提出を目指す自民党の人権問題等調査会(会長・太田誠一元総務庁長官)は昨年12月、約2年半ぶりに活動を再開した。
法案に反対した安倍晋三前首相が退陣したのを機に、推進派の古賀誠選対委員長らが福田政権で復権した。調査会は2月6日から本格的な議論を始める。
「与党内でもさまざまな議論がなされており、それを踏まえつつ、引き続き真摯(しんし)な検討を行っていく」。
福田康夫首相は1月23日の参院代表質問で、そう答弁した。推進派は、この答弁を「反対一辺倒だった安倍政権とは風向きが変わった」と受け止め、党内をまとめれば提出に踏み切れると勢いづく。
02年5月に発足した調査会は、初代会長、野中広務元幹事長を中心に法案成立を目指したが、取材活動を人権侵害と位置づけたメディア規制条項に報道各社が反対。
03年10月の衆院解散を機に廃案となった。
野中氏から会長職を引き継いだ古賀氏が再提出を目指したが、安倍氏ら保守系議員と対立した。
安倍氏らは北朝鮮による拉致問題と絡め、
「法案に国籍条項がなく、朝鮮総連(在日本朝鮮人総連合会)関係者が人権擁護委員になれる」「人権侵害の定義があいまいで、拡大解釈される」と反対して提出断念に追い込んだ。
対立構図は現在も変わらない。中川昭一元政調会長が会長を務める「真・保守政策研究会」は、法案提出阻止の勉強会を予定。
若手保守派の「伝統と創造の会」は、「政治活動を萎縮(いしゅく)させる平成の治安維持法だ」(会長の稲田朋美衆院議員)として、執行部への意見書提出を検討している。
複数の調査会幹部は「法案の成立が第一なので、メディア条項は削除しても構わない」と明言する。
「保守派が、反対して見せ場を作ろうとしているだけ。国籍条項は設けてもよい」との声もあり、本格的な議論を前に争点を解消する柔軟姿勢を示唆する。
公明党は「今国会で成立させたい」(北側一雄幹事長)と前向きだが、国籍条項の設置には消極的だ。
自民党が法案の再提出を見送った05年8月、民主党は独自の法律案をまとめた。
人権委員会を内閣府の外局に設置し、メディアに関しては、自主的な解決に向けた取り組みを努力義務で規定することが柱だ。
与党審査を経て提出が見込まれる政府案をベースに、付帯条項や見直しなどを求めていくべきだとの声は強い。
自民党と民主党の協議では、法務省からの独立性が担保されるかも焦点の一つとなりそうだ。
>>2以降に続きます。