08/09/03 21:21:42
札幌の市民グループ「ナキウサギふぁんくらぶ」(市川利美代表)が、
「中国・チベット高原のナキウサギが大発生すると、日本が猛暑や豪雨になる」と
放送したNHKの番組は「虚偽または非科学的で、ナキウサギが不当に
温暖化で悪者扱いされた」として、NHKに訂正を求め、放送倫理・番組向上機構(BPO)に
調査と審理を要請した。NHKは反論しており、自然保護の象徴的な存在の
ナキウサギが温暖化論争に巻きこまれた形だ。
番組は、NHK総合テレビで七月三十日午後七時半から全国放送された
「ちょっと変だぞ日本の自然3 風が吹けば○○が…大変だスペシャル」。
アジアでの環境異変が日本の異変に連鎖している一例として、
中国科学院の西北高原生物研究所の研究を取り上げた。
まず、チベット高原では少雨と家畜の増加で草原の草丈が短くなり、
同高原に生息するクチグロナキウサギの視界が開け、雄と雌が出合いやすくなって
大発生した、と紹介。
その上で、クチグロナキウサギが草を根こそぎ食べて砂漠化し、砂漠化による
温暖化で上空のチベット高気圧が強まり、日本が猛暑や豪雨になる-として
「チベットでウサギが増えた今年は猛暑や豪雨に注意しましょう」と呼び掛けた。
これに対し、ナキウサギの生態に詳しく、チベットでの調査経験もある
川道武男・元大阪市立大助教授は《1》クチグロナキウサギのつがいになる時期は
草が伸びる前の雪解け直後《2》雄と雌は自分たちが掘った地下トンネルの中で
頻繁に出合う《3》鳴くことで自分の存在を知らせる-と指摘。
「草丈の変化による大発生説は荒唐無稽(むけい)。今年の大発生も疑わしい」として、
ふぁんくらぶと共同で八月十一日にNHKに意見書を出した。
NHK広報局は「西北高原生物研究所は草丈を高くすると、ナキウサギが減るという
実験結果を得ている。生息密度が十年で倍増したデータもあり、同研究所は
『大発生と言える状況が続いている』と結論付けている」と反論、訂正には応じない方針だ。
ナキウサギは北半球の高緯度地域の高山などにいて、世界で約二十種が
確認されている。国内では道内にのみエゾナキウサギが生息する。
クチグロナキウサギはチベット高原に生息し、鼻から口にかけて黒いのが特徴。
エゾよりひと回り大きく、体長一二-二五センチ、体重一〇〇-二〇〇グラム。
TITLE:環境・自然・科学 北海道新聞
URL:URLリンク(www.hokkaido-np.co.jp)