08/05/15 22:11:58
独立行政法人理化学研究所(野依良治理事長)は、大型放射光施設SPring-8に設置した
世界最高性能のX線光電子分光装置を使って、「酸化ニッケル(NiO)がなぜ金属ではないのか?
(なぜ電気を流しにくいのか?)」という長年の謎に迫り、電気伝導の機構がニッケルと酸素が
複雑に絡み合った現象であることを解明しました。
本研究は、放射光科学総合研究センター(石川哲也センター長)量子秩序研究グループ
励起秩序研究チームの辛埴チームリーダー(国立大学法人東京大学物性研究所教授
兼任)と田口宗孝研究員、石川X線干渉光学研究室の石川哲也主任研究員、財団法人
高輝度光科学研究センターの大橋治彦副主席研究員と仙波泰徳研究員らの共同研究
による成果です。
酸化ニッケルは、古くから非常によく研究されてきた物質の1つで、固体物理の教科書には
必ず出てきます。現代では、磁気素子や高密度磁気記録媒体などエレクトロニクス材料の
基板としても使われています。金属や絶縁体を記述する基礎理論であるバンド理論によれば、
酸化ニッケルは金属となります。
しかし、実際の酸化ニッケルを調べると、逆に電気を通しにくい絶縁体であることが1930年代
頃から明らかになりました。このごくありふれた物質が「なぜバンド理論と合わず電気を
流しにくいのか?」という問題について、当時の多くの物理学者たちは困惑していたそうです。
そして、ネヴィル・フランシス・モット(Nevill Francis Mott:1977年ノーベル物理学賞受賞)を
はじめとする、そうそうたる物理学の巨匠たちがこの問題に取り組んできましたが、問題の
提起から70年以上も経た現代でも、その機構を正しく記述する理論がいまだに確立できていません。
これまで、このわずかな電気伝導の担い手は酸素の電子であるとされてきました。
本研究は、これまでの解釈とは異なり、伝導の担い手はザン・ライス束縛状態というニッケルと
酸素が複雑に絡み合った状態にある電子であることを示しました。
ザン・ライス束縛状態は、銅酸化物高温超伝導体において超伝導の担い手として知られて
います。研究では、このザン・ライス束縛状態が銅酸化物高温超伝導体特有なものでなく、
電荷移動型絶縁体※5一般にも存在する可能性があることを指摘しました。
これは、これまで長い間、難問題とされてきた酸化ニッケルをはじめとする遷移金属酸化物の
伝導機構研究に新たな視点と理解を可能にしたと言えます。
この研究成果は、米国の科学雑誌『Physical Review Letters』(5月23日号)に掲載されるに
先立ち、オンライン版(5月19日付け:日本時間5月20日)に掲載されます。
(ソースが長いので、以下省略いたします。続きはソースをご覧下さい)
ソース:URLリンク(www.riken.jp)
ダイジェスト:URLリンク(www.riken.jp)
理化学研究所HP 2008年5月15日
※ご依頼いただきました
スレリンク(scienceplus板:544番)
平成20年5月15日