08/01/08 13:37:23
ヘリコバクター・ピロリ菌が胃がんを発症させる仕組みを昨年世界で初めて解明した、
北大遺伝子病制御研究所の畠山昌則教授(分子腫瘍(しゅよう)学)と同大学院生大西
なおみさんらの研究グループが、ピロリ菌が作るタンパク質を用いて実際の動物(マウス)に
がんを発症させることに初めて成功した。試験管内の実験で解明したがん化の仕組みが
複雑な生体内でも働いていることが分かり、胃がんの新たな予防法や治療法開発に一歩
近づく研究と期待される。米科学アカデミー紀要の電子版で今週中にも発表される。
研究グループは、ピロリ菌が作るタンパク質CagA(キャグ・エー)の設計図である
遺伝子をマウスの受精卵に注入。生まれながらに全身の細胞でCagAを作り出すマウスを
誕生させ、七十二週間、観察した。
生後三カ月までに二百二十二匹の六-七割に、胃の上皮細胞が増殖し、胃壁が厚くなる
異変が発生。その後、六匹に胃や小腸のがん、十七匹が白血病やリンパ腫など血液がんを
発症した。
研究グループは「マウスが自然状態で消化器がんになることはまずなく、生体に入った
CagAでがんが発症したにちがいない。また、CagAが消化器以外のがんとも関係が
ある可能性もでてきた」と指摘している。
畠山教授らがこれまでに明らかにしてきた胃がん発症メカニズム=図参照=は、
URLリンク(www.hokkaido-np.co.jp)
《1》ピロリ菌がCagAを胃の上皮細胞に注入
《2》CagAが細胞内のタンパク質(PAR1)と結合し、上皮細胞同士の密着構造を
破壊、炎症やかいようを起こす
《3》さらにCagAが細胞内の別のタンパク質(SHP2)と結合し、異常な細胞増殖が
始まり、がんになる
-という過程。
畠山教授は「私たちが解明した細胞レベルのメカニズムが個体レベルで発展的に確かめ
られたのは大きなステップ。CagAが世界初の細菌に由来するがんタンパク質である
ことも最終的に実証できた。今後研究を進め、予防や治療開発につなげたい」と話している。
ソース 北海道新聞
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