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タカラバイオ株式会社(社長:加藤郁之進)では、世界に先駆けてRNA干渉酵素
(mRNAインターフェレース)の探索やRNA干渉酵素を用いた遺伝子発現制御法を
開発してきましたが、RNA干渉酵素の利用が最も期待される遺伝子治療への
応用の第一歩として、エイズウイルス自身が特異的に発現するTatタンパク質によって、
RNA干渉酵素(MazF)の発現が誘導され、産生されたMazFの作用によりエイズウイルス増殖に
必要なmRNAやT-細胞自身のmRNAが破壊され、ウイルスが消滅するだけでなく
T-細胞自身の細胞死も誘導されるモデル実験系を作製しその効果を確認し、
昨年の日本分子生物学会で発表いたしました。
昨年発表した系では、エイズウイルスの代わりに模擬的にTatたんぱく質を発現する
レトロウイルスベクターを用いていました。今回はエイズウイルスそのものを、
RNA干渉酵素(MazF)発現系が組み込まれたヒトのT-細胞由来のCEM細胞に
いろいろなドースで感染させたところ、約2-3週間後にウイルスはほぼ完全に消滅しており、
検出されませんでした。
これらの成果を本年8月24日から26日まで日本医科大学で開催される
第12回日本遺伝子治療学会で発表します。
以上の成果は、当社主導の下、ソウル大学分子生物学研究所の金善栄教授らのグループと、
当社の持分法適用関連会社であるViroMed社の研究グループならびに当社の取締役で
米国ニュージャージー医科歯科大学(UMDNJ)の井上正順教授のグループとの共同研究で行われました。
エイズ治療の困難さはエイズウイルス自身が猛烈な速さで遺伝子変異を繰り返すために、
従来の手段ではエイズウイルスを押さえ込むことができない点でした。しかしながら、
当社が開発したこのエイズ遺伝子治療はエイズウイルスがどのように遺伝子変異を起こしても、
変異したmRNAそのものを破壊するため、遺伝子変異を超越した遺伝子治療になると考えられます。
現在、世界中でRNAそのものによる遺伝子発現制御法「RNA干渉:RNAi」を用いた
応用研究が繰り広げられていますが、当社の RNA干渉酵素による遺伝子発現制御は、
革新的な「RNA干渉」の道を開くものと期待されます。
なお、当社は米国ニュージャージー医科歯科大学(UMDNJ)よりRNA干渉酵素の
世界の独占的実施権を取得しています。
RNA干渉酵素は、DNA鎖の特定の配列を認識して切断する制限酵素のRNAバージョン、
すなわちRNA制限酵素とも言えるものです。一本鎖のRNA以外の核酸、例えばDNAや
2本鎖RNAなどには作用しません。当社の取締役でUMDNJの教授である井上正順らのグループによって、
大腸菌の毒素タンパク質の一つであるMazFが、RNAの特定の配列(ACA)を認識して切断する
RNA干渉酵素であることが世界で初めて発見されました。
一方、当社の研究グループは、DNA鎖の特定の配列を認識して切断する制限酵素が
生物界に広く存在するのと同様に、一本鎖RNAの特定配列を認識して切断する酵素群が
大腸菌以外の他の細菌などにも存在するのではないかと考え、スクリーニングを精力的に
進めた結果、7種の新規RNA干渉酵素を発見するに至りました。具体的には、タンパク質の構造分類で
MazFと同じPemKファミリーに属する毒素タンパク質をコードする枯草菌やアンモニア酸化細菌などの
細菌の遺伝子を大腸菌で発現させ、一本鎖RNAに対する切断活性を調べました。
その結果、一本鎖RNAの4塩基から7塩基の長さの特定配列を認識して切断できる新しい7種類の
RNA干渉酵素を発見しました。現在までに判明した、それらの干渉酵素の主要な切断塩基配列は、
それぞれU/ACAU, GA/ACU, U/CCUU, UU/CCUUU、U/ACA、GA/AUです。
現在当社の研究グループは、さらなる新規RNA干渉酵素のスクリーニングを継続中です。
ソース
URLリンク(www.takara-bio.co.jp)