08/01/25 11:26:09
第7回「次期戦闘機選定と日米同盟の将来(下)」
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(略)
航空自衛隊がF-22Aを採用するとなれば、日本周辺でも各国空軍で高性能の戦闘機が配備されつつ
ある中で、日本が格段に優れた防空戦闘機を持つこととなって、空の守りは充分に堅いものと
なるはずです。その意味ではF-22Aラプター導入は、価格を別にすれば結構なことなのでしょう。
しかしもし日本がラプターを採用するとしても、事はそう単純ではなさそうです。これまで航空自衛隊は、
1960年代のロッキードF-104Jといい、1970年代のマクダネル・ダグラスF-4EJといい、1980年代の
F-15Jといい、アメリカ製の第一線機を導入して、日本でライセンス生産してきましたが、ラプターに
ついてはこれまでのようにライセンス生産して、パイロットを養成するだけでは済みそうもありません。
まずアメリカが自国の航空技術の最先端であるラプターのライセンス生産を許可するかどうか。
とくにステルス技術は現在のところアメリカだけが実用化していますから、それをいかに同盟国とはいえ、
技術的には強力なライバルになりうる日本に、おいそれと学ばせてくれるとは考えにくいところです。
ひょっとするとステルス性に関する機体の整備はアメリカの手で行う、などということになるかも
しれません
レーダーや火器管制システムのハードウェアとソフトウェアも秘密の多い部分でしょう。また電波
傍受システムには、考えられる敵側の電波源のデータベースが必要ですが、それも重要な秘密の
はずです。
それらに何か問題が起きるたびに、あるいはアップデートするたびにアメリカから技術者が来て、
日本側は手も触れられない、といった事態になったりするんじゃないでしょうか。
■「日米同盟の枠組変更」まで踏み込む政治決断があるのか
おそらく日本がラプターを採用しても、その運用にあたってはアメリカの密接な協力や支援が
必要になりそうです。もちろんこれまでのF-104JやF-4EJ、F-15Jの運用についてもアメリカからの
さまざまな支援や協力があったのですが、それらとは格段に程度が違うことになるでしょう。
逆に見れば、日本がラプターを採用して運用するには、そこまでアメリカと密接な関係を持つ
必要があるだろう、ということもできます。
すでに航空自衛隊は全国をカバーする防空情報指揮システム「JADGE(ジャッジ)=新自動警戒
管制システム」の情報を在日米空軍と共有することにしていますし、防空部隊を統括する航空総隊の
司令部を、東京都の府中基地から在日米軍/米空軍司令部のある横田基地に移動させることに
しています。
また海上自衛隊のイージス艦による弾道ミサイル防衛でも、弾道ミサイルの発射や飛来に関する
早期警戒情報など情報面でのアメリカ軍との密接な協力が必要になりますし、高速・高高度の
弾道ミサイルも迎撃可能となる次期迎撃ミサイルSM-3ブロック2は日米が共同で開発することに
なっています。
このように日本の防衛、とくに弾道ミサイル防衛も含めた防空については日米の協力・協同態勢は
より緊密なものになりつつあります。その意味ではもし航空自衛隊がF-22Aラプターを導入して、
上に記したような状況になったとしても、この日米緊密化は時代の趨勢とはいえるかもしれません。
そうだとしても、防空の第一線に立つ戦闘機の運用にあたってアメリカの支援が不可欠になるという
状況を日本が受け入れるのか……。
世界最強の戦闘機を航空自衛隊が手にするには、価格や輸出禁止政策という障壁の前に、
まず日本が防衛についてアメリカとの協同態勢をそこまで緊密なものにする覚悟があるか、
が問われることになりそうです。
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