08/07/26 09:34:20
★中国騒乱続発 五輪愛国熱にもリスク
北京五輪を目前に中国各地で騒乱や凶悪事件が続いている。経済成長に置き去りにされた人々の不満が
噴き出した。厳戒と愛国の鼓舞だけでは、五輪成功に別の脅威を抱え込む恐れもある。
雲南省昆明市では今月二十一日、爆弾で二台の通勤バスが相次いで爆発し二人が死亡した。先月末には
貴州省で少女の死亡事件の処理に対する不満から一万人以上が公安当局の建物を襲い、今月も陝西省や
浙江省などで住民と公安当局が衝突した。
中国で民衆と当局の衝突は少なくないが、最近は公安機関を直接襲う攻撃性が目立つ。今月一日には
取り調べを逆恨みした無職の男(28)が上海の公安分局で警官六人を殺害する事件も起きている。
中国は今年上半期の経済成長率は二けたを維持したが、消費者物価上昇率は8%近くにも達した。とくに
食品価格の上昇率は20%を超え貧困層を直撃している。
しかし、政府に不満を表明する投票や言論、表現の自由は制限され、集団で民意を示せば公安当局の介入を
招き衝突に発展する。公安当局は地方幹部とのつながりが深く、民衆の不信感は根強い。
北京五輪は中国に「人間の尊厳を保つ平和な社会」(五輪憲章)をもたらす目的で開催が決まったが、理想まで
の道は遠い。当局は「五輪平安がなければ、すべては空談義になる」(党機関紙「人民日報」)を合言葉に厳戒で
五輪を乗り切ろうとしているようだ。
チベットやウイグルなど少数民族や地方からの陳情者を事実上、首都から締め出し、街頭や公共交通機関に
対する監視を強めた。「中華民族の団結」を訴え「敵対勢力の摘発」を呼び掛ける。
しかし、ここには落とし穴もある。四年前のアジア杯サッカーの「反日」騒動や今年の反フランス運動に見られる
ように、中国民衆の現状に対する不満は時に「愛国」の旗印を掲げて噴出する。
各国選手団や観客の中にはチベット旗をあしらったTシャツや手で「T」の字をつくるなどの方法で抗議の意を示す
動きがあるという。こうした活動に民衆が冷静さを保てるか。五輪ツアーを組織した旅行社や航空会社には民衆
と観光客の間で起きるトラブルを懸念する声も強い。
テロや抗議への対策と同時に愛国主義の暴走に対する警戒も五輪成功に欠かせない。両面の備えなくしては、
北京五輪が、かえって中国への違和感を世界に広げる結果に終わるのではないか。
(中日新聞 2008年7月26日)
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