08/07/18 03:55:50
★【ちゃいな.COM】中国総局長・伊藤正 「80後」は中国を変えるか
中国で最近、にわかに注目を浴びた言葉に「80後」がある。1980年代生まれの世代を指す。数年前から
ネット上で使われだしたが、自己中心的で社会道徳や責任感を欠くといった否定的な評価の対象になる
ことが多かった。
「80後」は、70年代末に始まった改革・開放と一人っ子政策の申し子だ。彼らの大半は「家宝」として
甘やかされて育ち、都市居住者の多くは大学へ進学するが、有利な就職が目的で、かつての学生のように
国家や社会への使命感を持つことはほとんどないという。
中国のサイトには、「80後」に関する膨大な文章があるが、少なくとも今年初めまで、「80後」を前向きに
評価するものは少数だった。「寮で洗濯もできず、風邪をひいても家人を呼ぶ」ひ弱な学生やら、乱れた
男女関係、さまざまな犯罪やらを紹介し、中国の将来を憂える文章が少なくなかった。
ところが最近、それが一変した。「80後」賛美を有力各紙や国営通信社までが始めたのだ。例えば、全国紙
「光明日報」は今月12日、「“80後”は党と人民が信頼できる一代だ」と題した長文の署名記事を掲載した。
記事はまず、今春の五輪聖火リレーで、国外の「80後」中国人留学生らが「チベット独立分子」の妨害を排除し、
「国家主権と民族の利益」のかかる聖火を守ったと評価。「彼らは五星紅旗を振り北京五輪擁護を叫んで」
中国の団結力を世界に示したと「祖国熱愛の情」を称(たた)えた。
次には四川大地震での「80後」の自発的な献金、献血やボランティア活動への参加だ。大学生らは「国が
何をしてくれるかではなく、君が国に何をするか」の精神で、ボランティアの中心になったと指摘。そして同胞
の災難に、援助の手を差し伸べた彼らの体には中華民族の高貴な精神と5000年来の頑強な血液が
流れているとし、「彼らこそ祖国の未来の建設者」と絶賛した。
記事は最後に、「80後」の弱点として「共産党がなければ新中国はない」ことを認めず政治に関心がないこと
などを挙げ、この世代に対する思想政治教育や共産党が列強の支配から民族を解放した歴史教育と愛国主義
教育の強化を強調している。官製メディアの結論はほぼこれに近い。
この記事について、四川大地震の支援活動に参加した学生数人に感想を聞いたところ、反応は冷淡だった。
ある学生は「大きなお世話だ」と記事を批評した。この世代はお上だけでなく、親からの干渉さえ嫌う。自意識が
強く、自らの価値観で行動する特徴があり、大地震への支援活動も自発的行動だった。当局が陰で糸を引いた
聖火リレーの行動とは違う。
昨年12月に「中国青年報」が行った青年の意識調査では、中国人の大多数が外国を崇拝しているとの回答が
59%を占め、中国人であることに自信がないとの答えも48%に上った。青年たちが求めているのは、公平で
民主的な社会の実現にほかならない。
それは、中国だけでなく日本でも同じではないか。青年たちはネットを通じ、情報統制の壁を破り価値観を共有、
しばしば批判の矛先を党や政府に向ける。その一方で、文革世代の「60後」や「70後」のように党に歯向かう
ことはない。ただ党の思想政治教育にはそっぽを向くだけだ。西側文化の影響が濃厚な「80後」や次の「90後」
の新世代が、中国社会を根源から変える時代がくるか、注目してよいだろう。(いとう ただし)
(MSN産経 2008.7.18 02:53)
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