08/07/03 11:37:53
盛岡市加賀野育ちの写真家大村次郷さん(67)=東京都世田谷区在住=は、チベット亡命政府のある
インド北部ダラムサラを訪ね、3月の中国チベット騒乱発生後、唯一とみられるチベット人の中国国外
越境者の取材に成功した。
大村さんは5月29日から6月12日までインド入り。通算3回目、今年初め以来となるダラムサラには
6日間滞在した。現地に住む日本人女性から「中国を脱出してきたチベット人男性がいる」との情報を
入手した。複数関係者によると騒乱後は国境が封鎖され、それまで年2000人いた越境者はこの男性
1人。身を寄せている難民収容所に6月3日出向き、接触を試みた。
男性は四川省出身のクンサム・ソナムさん(38)。祖国の家族に危害が及ぶことを恐れて拒まれることを
覚悟したが「高原の奥地にいて捜し当てられることはない」と取材に応じたという。
クンサムさんによると、妻子は遊牧をし、自身は露天商を経営。滞在先のチベット・ラサで3月上旬に
騒乱が始まり、警察や軍当局への投石運動に加わった。同様の活動で過去2回、拘束された経験もあり
「今度は殺される」との恐怖感から国外脱出を決意した。
ネパール国境から脱出するまで7回、検問に遭遇したが「騒乱など知らない」と、ひたすらはぐらかした。
同国で商売をやろうと騒乱前、パスポートとビザを取得していたことが決め手となり、3月26日、国外脱出を
果たしたという。
ラサで目撃した中国当局による制圧現場については「銃を撃ってきた」「行商仲間が殺された」と静かに口を
開いたが、それ以上は語らなかった。大村さんは「着の身着のまま、ようやくたどり着いたようだ。心の整理が
ついていなかったのだろう」と取材時の印象を語る。
ダラムサラ滞在中、同収容所近くの寺院では、制圧されたチベット人らが血を流す残酷な写真が張られ、
中国政府に抗議して読経する約40人を見た。
大村さんは「政治の宗教介入は、中国が抱える構造的問題を露呈している。四川大地震や北京五輪に世間の
関心が移っているが、チベット問題を忘れてはならない」と訴える。■以下省略
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