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【断 富岡幸一郎】直視できない歴史観
2008.5.16 03:40
URLリンク(sankei.jp.msn.com)
中国の国家主席が10年ぶりに来日し、首脳会談が行われた。
中国側は「暖かい春の旅」と自画自賛で、つがいのパンダの貸与で日本国民を喜ばせておけば、
ガス田もチベットも毒ギョーザもやり過ごせると高を括(くく)っていた。
江沢民の反日的な愛国主義路線からの転換を、今回の胡錦濤主席は演出したといわれているが、
果たしてどうか。いわゆる歴史問題について、戦争や侵略に対する日本の「おわび」や「反省」には触れず、
共同声明では「歴史を直視し、未来に向かい、日中『戦略的互恵関係』の新たな局面を絶えず切り開く」
との表現でまとめた。これを未来志向として、評価するのは、しかしとんでもない話である。
「歴史を直視し、未来に向かう」という文句は、ただちにあの言葉を連想させる。南京大虐殺記念館に
掲げられた「歴史をかがみとし、未来に目を向ける」という標語である。昨年末にリニューアルされた
同記念館を訪れて唖然(あぜん)とした。最近では中国側の一部研究者から疑問視されている日本軍の
30万人虐殺説は、34万人説へと増えており、虐殺を描いた怪しげな絵画や写真が所狭しと並べられている。
驚いたのは新資料館の2階の展示であり、日本の明治以降の近代史がそのままアジアへの「侵略・虐殺史」
であると、徹底した反日プロパガンダをやっている。展示の冒頭には、サーベルをさげた明治天皇の肖像画
まで掲げられ、侵略者の親玉扱いである。中国国内のこうした状況を放っておいて、歴史をどう「直視」
せよというのか。どんな「未来」があるというのか。(文芸評論家)