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黄河崩壊:汚染と水不足の現実
2008年4月28日 16時46分
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■死を招く汚染の源
乾ききった大地が、目の前に広がっている。ここ中国北部の乾燥地帯では、雨はもう何カ月も降っていない。
空を暗くするのは、湿った雨雲ではなく、吹き荒れる砂嵐ばかり。草木などとても芽を出しそうもない、
カラカラの荒野だ。
だが、黄河が蛇行するあたりで、その荒涼とした風景の果てに、目を疑うような沃野が開けてくる。
緑の稲穂が波打つ水田、黄色に染まった広大なヒマワリ畑、青々とした葉を広げるトウモロコシ、小麦、クコの畑。
照りつける日差しの下で、どの作物もよく育っている。
その光景は砂漠に浮かぶ蜃気楼ではない。チベット高原から渤海まで全長5460kmを流れる黄河。
そのちょうど中ほどに位置する、寧夏回族自治区北部のオアシスだ。秦の始皇帝が万里の長城の
衛兵たちの食料を調達しようと、農民の一団をここに送りこみ、人工水路を建設させ、耕作させたのが
そもそもの始まりで、2000年以上の歴史をもつ。
55歳の沈も、秦の時代からの伝統を受け継ぎ、黄河から引いた水で耕作を行っている。無尽蔵にも思える豊富な水。
沈はここなら水に困ることはないと、30年ほど前に移住し、トウモロコシを育ててきた。「こんなに美しい場所はどこにも
ないと思っていたものです」と、緑の畑を見渡して言う。
だが、この地上の楽園は急速に失われようとしている。驚異的な経済成長を遂げる中国では、農工業の開発と
都市化が急ピッチで進み、水需要が急増して、黄河が干上がりつつあるのだ。しかも、わずかに残った水もひどく
汚染されている。
人工水路のそばに行ってみると、目を疑うような光景があった。血のように赤い工場排水が排水口から勢いよく
ほとばしり、水路の水が毒々しい紫色に染まっていた。この水は黄河に注いでいる。このあたりには、以前は魚や
カメがたくさんいたそうだが、いまでは水質汚染が進み、飲み水はおろか、農業用水としても使えなくなっている。
沈の飼っていた2頭のヤギは、水路の水を飲んだ数時間後に死んでしまったという。
死を招く汚染の源は、畑の川上に位置する都市、石嘴山に立ち並ぶ化学工場や製薬工場だ。この街は、いまでは
世界最悪の公害都市に名を連ねている。「自分の体にじわじわ毒を盛っているようなものですよ。まったく、母なる河に
こんなことをするなんて」と、沈は怒りに声をふるわす。
写真
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