08/03/24 07:46:49
百聞は一見にしかず。中国政府はそう考えたのか、チベット自治区内外で起きた騒乱の模様を伝える映像を
部分的に公開した。自治区の中心都市ラサ街頭で地元住民が商店の玄関を壊したり、チベット仏教の若い
僧侶たちが治安部隊に挑みかかり連行される姿。「暴徒なのだ」と言いたげな光景が撮影されている。
英BBC放送で中国テレビ局の録画を見ながら、解説者の指摘にうなずいた。まったく別のことを映像は
見た者に考えさせてしまうのだ。
いまの中国で中央権力に刃向かう姿勢を公に見せることは、長期の刑務所か収容所入りを覚悟しなければ
ならない。行動に出るチベット人たちにはよほどの決意があるはずだ。何が彼らを反抗に駆り立てるのか。
「陰謀による扇動」だけで説得しきれまい。
10年前、映画「セブン・イヤーズ・イン・チベット」の原作者ハインリヒ・ハラー氏(06年1月死去)をオーストリア
西部の自宅に訪ねた。1951年の中国軍進駐前にラサ入りしダライ・ラマ14世の家庭教師を務めたハラー氏は
「ミミズさえ殺さないようにあらゆる生命をいとおしむチベット人の心」を絶賛した。そんな人々に怒りを募らせる
支配統治が続いたのだ。
ロンドンの中国大使館前で先週開かれたチベット支援集会で、中国での投獄経験のあるチベット人尼僧が
ほおに幾筋もの涙を流し、黙って目を閉じていた。故郷の同胞の運命に思いをはせたに違いない。情報を制限
しても、人々が考えることまで封じ込められない。チベットに向けた連帯意識は幅広いことを中国当局は
知るべきだ。
ソース=毎日新聞、町田幸彦氏(欧州総局)
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