08/02/08 19:25:38
特集ワイド:今、中国を語る/下 「五輪」開幕まで半年
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◇「改革開放」から転換期
中国の食事情とともに関心が高まっているのが、開幕まで半年に迫った北京五輪。
世紀の祭典に向けて大国、中国はどう変わっているのだろうか。
【司会・金子秀敏専門編集委員、まとめ・田中義宏、中川紗矢子】
◇フェア精神徐々に浸透/反日感情強くはない/「対決」の視点もう不要
金子 五輪とともに今年は改革開放30年でもあります。
莫 私から見れば中国では五輪よりも改革開放30年の方が重要というほど意味があります。
日本のメディアも中国の指導者も五輪を成長の頂点ととらえていますが、これまで中国は
開発のためにすべてを犠牲にし、格差、環境問題などの社会矛盾が拡大しました。
ここに来てターニングポイントを迎えたわけです。
これからはたぶん、政府はより国民の顔色をうかがいながらことを運び、延ばし延ばしに
してきた政治改革も日程に乗せるでしょう。「権利を守る」という意味の「維権」という言葉が
今日の中国国民の心情を代表しているでしょう。
金子 市民の期待感は。
富坂 逆に改革開放で国民が疲れていて、80年代を懐古しています。
ものは無かったけど幸せだったと。収入も増えたけど労働時間も延びた。
それを我慢して成り立っているのが今の消費社会です。だから苦しい生活をしてる人は
五輪に思い入れが強く、非常に期待しているようですね。
亜洲奈 (メーンスタジアムの)「鳥の巣」の現代建築は一つの中国人、北京人のアイデンティティー
だと思います。現代の象徴で未来を表している。それを自分たちのアイデンティティー
として親しんでいる。彼らは「中国は中華皇帝だけじゃない、現在の発展した自分たちに
気付いてほしい」と思っています。
金子 心配なのが反日感情。スポーツとナショナリズムが結びつくことは?
亜洲奈 最近、10都市を旅行して感じたのは、うわさに聞くほど反日感情は悪くない。
それどころか行く先々で助けられました。時々インターネット上で反日運動とか
嫌日運動とかが起きますが、それはネットの闇のようなもの。実際はそう悪いこと
にはならないと信じています。
富坂 以前に比べると、反日は流行ではなくなっています。ただ何が原因でスイッチが入るかは分からない。
日本側が挑発することや、中国側で盛り上がることもある。でも政府は絶対抑えるという姿勢を示しています。
莫 スイッチが入る恐れや土壌はまだ残っている。
もっと時間をかけて信頼関係を築いていかなければならないでしょう。
以前、日本の女性選手たちが中国の観衆に「応援者の皆さん、ありがとう」と言いました。
そういうのが本当は効果的なんです。
富坂 上海でも最近、「南京大虐殺の歴史を見直す」という論文も出ました。
反日の感情も底流にはあるけれど、一方で、そうでない人たちがものを言いやすい
環境が生まれているとも思います。
莫 文化大革命時代、中国を批判する本は「反中」のレッテルが張られましたが、今は中国を批判的に
書いている本でも「反中」とは言っていない。五輪のフェア精神が少しずつ浸透し始めているようです。
亜洲奈 中国は20世紀前半に列強から数々の侵略を受けた歴史があるけれども、オリンピックを境に
世界の一員として胸を張ってほしいですね。韓国では02年の日韓共催ワールドカップの後、
歴史問題で日韓関係を悪化させることが極端に少なくなった。逆に日本は、中国コンプレックスの
克服が必要でしょう。中国を攻撃する人ほど、実は中国への劣等感を秘めているのではないかと思います。
>>2以降に続く