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>>2の続き
ベトナムでは虐殺事件のあった省の博物館が実態調査を進めている。「生後数ヶ月の子どもや老
人が殺されている。赤ん坊や年寄りが武器を持っていますか?無抵抗です。本当にひどい」。
フーイエン省の調査の責任者、グエン・ティ・キムホア副館長(47)が虐殺の場所と犠牲者の数を
まとめた報告書を読み上げた。省内で33ヶ所679人の犠牲を確認したという。
なぜ武装していない人をたくさん殺したのか。聖公会大の韓洪九教授は朝鮮戦争との関連を指摘
する。「兵士達は、朝鮮戦争を体験した。共産主義者は人間ではない、殺さなければならない、とい
う反共イデオロギーの中で成長した。『アカ狩り』への心理的な準備が整っていたのです」
韓国では具さんの記事によって市民達が動いた。民主化運動の担い手も多かった。「ハンギョレ
21」で告発キャンペーンを展開した高?兌記者(40)は「私達は日本の植民地の被害者だった。
ベトナム戦争でも兵士が枯れ葉剤を浴びるなど、あくまで被害者だと思っていた。しかし虐殺が明
るみにでて加害者だったことがさらけ出された」と話す。
読者達の募金でベトナムに慰霊公園ができた。韓国の市民団体が慰霊碑を建て、被害者に生活
費を支援したり家を修理したりした。韓国人医師がボランティアで村の人たちを診察し若者が現地で
キャンプをして歴史を学ぶ。市民による謝罪と和解の行動は今も続いている。こうした動きに押され
るかのように韓国政府も学校や病院の建設を援助している。
98年、金大中大統領はハノイを訪れ、ベトナム戦争についてこう述べた。
「過去の一時期、不幸な時期があったことを遺憾に思う」
この言葉に対し、ベトナムのファン・バン・カイ首相は「過去に区切りをつけ、未来を見つめよう」と
述べただけだった。共産党独裁のもとドイモイと呼ばれる改革開放で経済発展を進めるベトナムに
とって韓国は重要なパートナーだ。そうした配慮もうかがわれる。
韓国軍は虐殺について、きちんとした真相調査をしていない。「包括的な過去の清算」を掲げてき
た盧武鉉政権は軍事政権による人権侵害の調査を進めてきたが、なおこの問題に手をつけるまで
には至っていない。
一方、送り出された兵士達は米軍が枯れ葉剤をまいた地域で戦い、10万人以上が後遺症とみら
れる病気に苦しむ。過酷な経験から精神を病んでいる者もいる。
ソウル市内に住む金泰根さん(62)は、65年から2年間、猛虎部隊の一員として派遣された。帰国
してまもなく、頭が痛くなり意識を失った。入退院を繰り返し、仕事もできない。枯れ葉剤の影響で
左足が細くなりマヒして歩けない。「国のために戦争に行ったのに、こんな体になってしまった。
治療法がないのがつらい」。世話をしてくれた妻に先立たれ、国からのわずかな傷病手当てでひとり
暮らしをしている。
ベトナム戦争は現在も、韓国の人々に重い影を落としている。