08/01/14 16:33:11
顔がほころんだ。疲れも感じないひと時だ。
「お父さん。どう、忙しい?」
「休めないねえ。毎日残業が3時間。昨日も帰ったのは夜10時だよ」
「今月の私の生活費なくなったよ。いつ送ってくれる?」
「いくらいるんだい。叔母さんに振り込むように言っておくよ」
「わかった。疲れ過ぎないよう注意してね」
江蘇省海門市から出稼ぎに来た趙介平さん(46)が携帯電話を握りしめていた。
週2回、長女の趙麗麗さん(21)への電話が唯一の楽しみだ。
2004年4月から北京五輪の建設現場を中心に働いてきた熟練の配線電気工だ。
麗麗さんは南京医科大学2年生。将来の内科医である。
「自分は学歴がないだろ。麗麗に偉くなってもらいたいんだ。おれの心の灯火だよ。
成績も優秀さ。努力して(中国共産)党員になってもらいたい。いい仕事を見つけやすい
からな」
故郷には妻と中学生の二女、70歳過ぎの両親がいる。家族に会うのは年に1回。
春節(旧正月)に帰省するときだけだ。
趙さんはいま、五輪選手の宿舎の建設現場で働いている。宿舎は完成間近だ。
もうもうと湯気が立ちこめる現場近くの大衆食堂でいつも昼食をとる。趙さんは
咳き込みながら、鶏肉揚げと白菜炒めを白米と一緒にかき込んだ。1食10元弱
(1元約15円)。休みなしで朝8時から夜9時ごろまで働く。
毎日、バスで1時間20分かけて広さ12平方メートルの部屋に帰る。家賃は200元。
晩ご飯は自炊で安く済ませ、1カ月の食費は500元前後に抑えている。ほかに電話、
バス代、生活用品で300元が消え、残りが家族への送金だ。
趙さんの稼ぎは月約3000元。出稼ぎ労働者の水準では“高級取り”だ。しかし、
麗麗さんの1年間の学費と生活費に約1万5000元かかる。だから節約に節約を
重ねている。北京に来てから観光巡りなどしたことがない。
「稼ぎが減るから休む気はしない。故郷辺りじゃせいぜい今の収入の半分ほどだから。
すべて娘のためだ」
趙さんのような農村部からの出稼ぎ労働者「農民工」は、全国で約1億2000万人。
北京ではざっと100万人を数え、このうち3万人が、急ピッチで進む五輪施設の建設を
支えている。
農民工の月収は全国平均で約1000元ほどだ。高度成長下の中国にあって、
重労働と低賃金にあえいでいる。労災、医療保険などもほとんどない。しかも、犯罪
検挙者の7割が地方出身者とされ、蔑視(べっし)の眼で見られている。不満は鬱積
(うっせき)するばかりである。
こうした農民工の存在は社会不安の種で、政府も、賃金の引き上げなど待遇改善策
を打ち出してはいる。だが、賃金の未払いなど問題は山積し、期日に賃金が払われる
のはわずかに45%というデータすらある。
趙さんは「医療保険はないよ。金が必要だから、会社にも保険を出せなんて言った
ことはない。仕事を失いたくないし。とにかく事故に遭わないよう気をつけている」と話した。
中国が国家威信をかける五輪プロジェクトの一翼を担っているという思いも、趙さんを
支えてもいる。でも、不安もいっぱいだ。
「建設が終われば皆、北京を追われる。施設はおれたちが造ったのに、五輪競技を
見れないのも不公平だ」
観光客があふれる五輪期間中、「見栄えを良くするために出稼ぎ者はお払い箱。
北京から閉め出される」(河南省からの労働者)とのうわさは消えない。
趙さんは言った。「五輪の後はどうするかって? 家族のために、10年の上海万博の
建設現場に行って稼ぎ続けるさ」
ソース(MSN産経ニュース)
URLリンク(sankei.jp.msn.com)
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写真=北京市内の五輪施設の建設現場で働く出稼ぎ労働者たちは、近くにある宿舎
の前で、しゃがみながらつかの間の昼食をとっていた
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