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人気アイドル歌手の初音ミクをご存じだろうか。
テレビには出演せず、コンサートも開かない。
ネットの仮想空間から一歩も出てこないから会った人はいない。
幼さを残す16歳の少女の歌声が、それでも大勢のファンを虜(とりこ)にしている。
▼初音ミクは札幌のIT企業が開発した合成音声ソフトの商品名である。
パソコンに旋律や歌詞を打ち込むと、思い通りに歌ってくれる。操る側の技の差が
歌唱力を左右する。初心者では、いかにもロボット風で不自然に聞こえる。
うまく歌わせる「初音ミクの達人」たちが、ネットで自らの作品を競い合っている。
▼北京五輪では、後で合成映像だとバレた花火や少女に口パクで歌わせた演出が
人々の失望を買った。ちょうど同じころ、東京で開いた漫画の祭典「コミックマーケット」
で起きた出来事は対照的だ。
架空の人間である初音ミクに扮(ふん)したコスプレ女性が登場すると、一目見ようと
人だかりができた。床まで届きそうな青色の髪がカッコいい。
▼実物を模した仮想。仮想から飛び出した実物。限りなく近づく2つの次元の近接点
から「失望」と「熱狂」という正反対の結果が生まれる。
その判断の境目は、裏切られたという感覚の有無だろう。技術は人の五感を簡単に
だませる。ならば人は裏切りを見破る第六感を磨かなくては……。
日経・春秋
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