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--七竈の趣味が鉄道模型というのもユニークですね。
桜庭 住んでいる人が相互監視をしているような地方都市の箱庭的な閉塞感があって、その中に家族という箱庭が
あって、そこにさらに鉄道模型というミニチュアな世界がある。これはロシア人形のマトリョーシカのような箱庭連鎖
の象徴です。ドールハウスが趣味でもよかったのですが、美少女とのギャップが欲しかったので鉄道模型にしました。
--雪風という少年との関係は?
桜庭 思春期のころって、少女は少年のことを神々しい存在として見ている。それはあの世代特有の異性との距離感
の表れで、大人になると距離が近くなり、やがて異性という存在をどこかなめるようになってしまう。雪風という名前は
神林長平さんのSF小説「戦闘妖精雪風」(早川書房)からの引用ですが、どこか現実味がない物語的な名前で、
過去の記憶の中にだけ存在するきれいな少年にぴったりの名前だと思いました。
--物語の最後で、七竈は少女期の感情と決別するわけですね。
桜庭 そういえば、女の子が成長し、少女というロールプレーを降りる部分まで書いたのもこれが初めてですね。
--マフラーの赤など鮮烈な色彩が印象的です。
桜庭 「GOSICK」(富士見書房)では、モノクロームの世界を作って、巻が進むに連れて紫と緑が混ざっていくという
イメージを、イラストレーターの武田日向さんと一緒に考えましたが、「少女七竈」ではモノクロームの世界に最初から
赤い七竈の実という色彩のイメージが浮かび、キャラクターが決まりました。プロットやキャラクターよりも先に色彩
という感じで、犬のフン→恋愛→母娘→七竈と決まっていきました。
--今後の予定は。
桜庭 東京創元社から冬に「赤朽葉家の伝説」という本が出ます。ミステリー的な要素もありますが、大河小説といった
面が強い物語です。鳥取の旧家を舞台にした祖母、母、娘、三代の女たちの人生と、60年前に目撃された飛行人間の
謎がテーマですね。そのほか「GOSICK」の長編が冬に刊行予定で、ジョン・ディクスン・カー(米の推理作家、06~77年)
生誕百年のアンソロジーにも参加します。冬にかけていろいろと出ますので、よろしくお願いします。
(「まんたんブロード」27号 06年8月25日発行より)