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正装杖をつき 名将が、スタジアムに帰って来た。日本と、母国ボスニア・
ヘルツェゴビナの一戦を、鋭い視線で見つめた。
試合開始13分前の午後7時7分、国立競技場のメーンスタンド入り口に横付け
されたワゴン車から降り立った。アシマ夫人(64)、長男のアマル前千葉監督(40)に
支えられていたが、右手でつえを使いながらゆっくりと歩を進めた。
コートの下はスーツにネクタイの正装。病に倒れてから75日ぶり。
順調な回復を見せると、ガラス張りの特別室で、90分間観戦した。
ハーフタイムには電光掲示板にメッセージが出されると、サポーターからは
温かい拍手が送られた。
倒れる前に115キロあった体重は、現在は102キロ。一時は95キロまで落ちたが、
回復とともに増加。この日も、スタンドでものを食べる姿が見られた。
川淵キャプテンによると、ハーフタイムには日本協会名誉総裁の高円宮妃久子さまの
訪問を受け「妃殿下の前なら10時間でも立っていられる」と冗談めかし、
立ち上がって対応。また、ボスニアを応援すると言っていたアシマ夫人が、
そういうそぶりを見せなかったことに対し「女性の考えはいつでもすぐ変わるものだ」
と、オシム節も健在だったという。
やせて見た目の印象は変わったが、情熱は変わっていない。
この日、DF闘莉王(浦和)が後半、あいさつに出向くと、間髪入れず一喝。
「オレはここにいてもいいが、お前はここで何をやっているんだ!」と、負傷中の
闘莉王を容赦なくどなりつけた。
連日、4~5時間のリハビリに励み、ついにこの日を迎えた。早ければ2月下旬に
退院できる見込み。オシム前監督の生きざまは、岡田ジャパンに力を与える。
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つえをついて観戦に訪れたオシム前監督(左はアシマ夫人)
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