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ハンド決戦、途中経過を国立で伝えて
「フットボールが帰って来た」―それが96年欧州選手権のスローガンだった。
まだプレミアリーグは世界のトップリーグとは見なされておらず、イングランド代表も2年前の
W杯米国大会出場を逃していた。英国で生まれたフットボールは、もはや本家本元の手を離れ、
どんどんと遠ざかっているようにさえ見えた時代である。
実をいえば、大会自体について覚えていることはあまりない。地元イングランドの頑張りは目に
ついたものの、逆に言えば、頑張り以外に見るべきものはあまりなかった。
だが、忘れられない思い出もある。
英国といえば階級社会。サッカーは労働者階級のスポーツ―サッカーというスポーツを愛するように
なってからというもの、わたしはずっとそう思いこんできた。それゆえ、ラグビーやクリケットを愛好する
富裕層は、サッカーになどまるで興味を示さないものだと信じきっていた。
あれは、イングランドが準決勝進出をかけて戦った日だった。同じ日、クリケットのイングランド代表も
テストマッチを行っており、その様子が録画でテレビ中継されていた。
クリケットのルールがいまひとつわからないわたしは、ただ漠然と画面を眺めていただけだった。
静かな試合。さすがに上流階級の愛するスポーツ―。
次の瞬間だった。
「たったいま、サッカーのイングランド代表が準決勝進出を決めました!」
突如として場内にアナウンスが流れ、場内がワーッという歓声に包まれたのだ。
サッカーファンであるがために、他のスポーツを妬(ねた)み、時には憎んだこともあったわたしにとって、
衝撃的な出来事だった。
1月30日、日本代表はボスニアヘルツェゴビナと親善試合を行う。同じ日、同じ時刻、ハンドボールの
男子日本代表も韓国との決戦に臨む。サッカーとハンドボール。接点はそれほど多くない。それでも、
クリケットファンがサッカーの結果に歓声を送った瞬間に涙が出るほどの感動を覚えたわたしとしては、
ボスニアヘルツェゴビナとの試合中、ハンドボールの途中経過を場内で伝える日本サッカーで
あってほしい、と心から願う。(スポーツライター)