08/04/30 13:13:07
県立美術館で19日から始まった三重県立美術館名品展。24日正午過ぎ、
仙台市から来た主婦の峯さん(67)がロビーのソファに座り込んでいた。
「なかなか行けない三重県のコレクションを見られて良かった。でも、お
なかがすいてしまって……」美術館巡りが好きな峯さんにとって、そこでの
食事は展覧会と同様の楽しみ。この日は到着してからレストランの閉店を
聞いた。「残念ですね。岩手では展示企画展と連動したメニューもあって、
また行こうという気になります」と話す。
県立美術館と県立図書館の間にあるレストランスペースは、年約250万円
の賃料のうち6割が免除されてきた。しかし財政難の折、県が3年かけて免除
を撤廃する方針を打ち出したところ、フランス料理店が3月に撤退。次の店は
まだ決まっていない。美術品を買う基金も、06年度末で約255万円と実質
的に底をついた。多い時には年5億円以上あった県から基金への払い戻しは、
この10年ほどは途絶えがち。県財政課は「各部局でぎりぎりの調整をしてい
る状況。バランスを考慮しなければ」と苦しさをにじませる。文化庁によると、
収集費がない館は他県でも見られるという。一方、美術館側にも工夫が求めら
れている。3月に提出された県包括外部監査は、県立美術館に06年度、3億
4330万円の県費が投入される中で、観覧者数が県人口の4%の7万7千人
余りにとどまったのは「決して高い数字とは言えない」と指摘。学校と連携し、
授業の一環としての利用を進めるなど努力を促した。尾形副館長も「バスに
美術館の前に止まってもらったり、ミュージアムショップを充実させたりと、
できることはいっぱいある」と自戒する。
今回のような他館のコレクション展は、借り先が1カ所で済むため、運搬代
などの経費が安くすむという財政的長所がある。監査でも、作品購入が難しい
中での他館との「交換展」の積極的な活用を提案している。財政問題で悩むの
は他県も同じだ。千葉県立美術館は無料だった常設展を04年度から一般
300円にしたが、入館者が年3万人ほど減った。同館は「人は来てほしいが、
財政も厳しい」と複雑な様子だ。逆に、宮崎県立美術館では05年度から一般
300円の常設展を無料化したところ、年3万人ほど入館者が増加。同館は
「県民の財産を広く見てもらおうと踏み切った。チケット収入は減ったが、
販売担当の人件費がなくなり、財政的には大差ない」と話す。
県立美術館の常設展での05年度入館者数は3万1503人で、全国の公立
美術館平均の3万1558人(文化庁調べ)とほぼ同じ。入館者数は企画展
の内容で大きく変わるが、伊藤学芸課長は「お客さんには来てもらわないと
いけないが、注目度が少ない分野の紹介も公立美術館の役割」と難しさを話す。
「今後は地域や大学と連携し、サポーターを増やしたい。美術館側にもニーズ
にあった普及活動をするなど、おもてなしの気持ちが必要」と伊藤課長。
取り巻く環境が厳しさを増す中、いかにファンのすそ野を広げていけるかが
今後のカギとなりそうだ。
朝日新聞 2008年04月27日
URLリンク(mytown.asahi.com)