08/08/01 22:24:38 0
あやこさん(30歳)の相談には驚かされました。性交の際、頻繁に中出しすると、
精液が腟壁にこびりついて不妊の原因になると本当に信じているようなのです。
インターネット上の掲示板に医学的知識を持っている方が書いていたと言うのですから
困ったものです。
しかも、中出しが過ぎると雑菌の温床になるので腟内を洗浄した方がいいと
アドバイスされたとのこと。腟内に常在しているデーデルライン杆(かん)菌には
自浄作用といって、腟の中を清潔に保つ役割があるわけで、それを洗い流して
しまったらむしろ腟炎の原因になるというのをご存じなのでしょうか。
この例に違わず、不確かな情報に振り回されている方々が大勢いらっしゃるのでしょうね。
確かに性感染症を軽視することはできません。昔であれば結核菌、今ではクラミジアが
卵管を詰まらせる原因になることはありますし、時には胎児にも影響を及ぼしかねないわけで、
感染の事実を知らない、コンドームも使えない、検査にも無関心では無防備きわまりない
ことになります。これでは不妊に向かってまっしぐらということになりかねません。
もちろん、妊娠・出産を望む二人はコンドームを使用するわけにはいきませんので、
せめて事前の検査で早期発見・早期治療のきっかけを作ってほしいものです。
仮にHIVに感染していたとしても体外受精を行う、治療の継続、帝王切開、人工乳などの
利用によって子どもへの感染を極力回避する方法があるわけですから過剰な心配は無用です。
ただし、不妊原因の5~10%に免疫が関係していることも知らなければなりません。
精子は女性にとっては異物なのです。異物が入って来れば強い拒絶反応を示すのが
普通ですが、精子を異物として排除してしまったら妊娠は起こり得ないわけで、
受け入れる女性は自らの免疫力を下げる必要があります。精子が子宮内に進入する
だけでも、このようなバリアを超えなければならないわけで、受精、着床、そして胎児の
成長となると、それは想像をはるかに超えた奇跡のドラマの連続ということになります。
とりわけ半分は自分にとっては異物である胎児を10カ月近く体内で育てるのですから
すごいことです。
女性の体内に精子と結びつく抗精子抗体が存在すると、腟から子宮へと入っていこうとする
精子と結合して、精子の受精能力や運動が抑えられます。この抗精子抗体は男性側に
できる場合もあって免疫不妊の原因になります。あやこさんが気にしておられる情報は、
この免疫不妊とかぶっているのではないかと思われます。
ところが、こんな厄介なこともあります。コンドームが性感染症予防に欠かせないことは
言うまでもありませんが、コンドームでの防御が完璧すぎて、異物の受け入れに
慣れていないと拒絶反応がさらに強く出てしまうというのです。結婚した後、いざ妊娠を
望む段になったときに初めてコンドームの使用を中止した。突然現れた精子という
異物に驚かされてしまうのでしょうかね。
「妊娠を望まないので最初から最後までしっかりとコンドームを使い通してきました。
性感染症予防にはコンドームが必須だと聞いています。しかし、それがいけないとなると
いったい私はどうしたらいいの?」と、女性の嘆きが聞こえてきそうです。
毎日新聞
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