08/07/23 19:05:49
◎ソース URLリンク(business.nikkeibp.co.jp)
今年4月。米国系の証券会社で不動産の証券化関連の部署に所属していたAさん(31歳)は朝、
いつものようにデスクに座り、パソコンを起動させようとした。ところが、何度暗証番号を
打ち込んでも、システムに入れない。不審に思いシステム担当者に電話すると、要領を得ない
説明を繰り返された。やがて、上司に別室に呼び出された。
「その時やっと、リストラだと気づいた。システムの人たちは前の晩から知っていたんだろう」
昨年夏にサブプライムローン問題が表面化して1年。米欧の巨大金融機関が多額の評価損失の
計上に苦しむ中、各機関の日本拠点でも人員削減や事業撤退・縮小の動きが急速に広がっている。
■「ボーナス提示金額1円」
Aさんだけではない。「年に1回支給されるボーナスの提示金額が1円だった」「内定をもらって
いたが、入社の数日前に取り消された」「リストラと悟られないよう社外には『体調不良で長期
休暇中』と説明されている」…。人員削減を巡るエピソードは枚挙に暇がない。
米欧の大手証券の日本拠点ではおおむね1200~2000人程度の人員を抱えるが、今回のリストラで
5~10%の削減を目指すところもあるようだ。米モルガン・スタンレーの東京拠点は今年に入り
2回にわたって、証券化関連で60人前後を削減。リーマン・ブラザーズは6月に子会社が手がける
住宅ローンの融資業務からの撤退を決めたほか、日興シティグループ証券は従業員の約1割に
当たる170人前後の人員削減を進めている。米JPモルガン・チェースによる買収が決まった
米ベアー・スターンズ。その東京拠点でJPモルガン東京拠点への移籍が内定したのは200人中、
約80人だけだ。
年明けから始まったリストラの第1波はサブプライム問題の発端となった証券化関連部門が中心
だったが、現在はM&A(合併・買収)助言などを手がける投資銀行部門や決済、システムといった
後方支援部門にまでじわじわと広がっている。
外資系を中心に金融機関向けの人材紹介を手がけるエグゼクティブ・サーチ・パートナーズに
よると、日本の外資系証券や銀行で働く人口は推定4万~5万人。同社ではそのうち1000~2000の
人員が既にリストラや希望退職などで異動したと見る。「優秀な人材の引きは依然強いが、
去年までと違ってメガバンクの需要も減っており、受け皿に乏しい」と小溝勝信代表は言う。
米系に比べて出遅れていた欧州系金融機関の日本拠点のリストラが今後本格化するとの声もある。
今年2月にリストラ対象になった米系証券の元社員は「しばらくは職探しせずに様子を見る」と話す。
米金融システム不安は収束へ向かうどころか深刻さを増している。7月13日には、米国のヘンリー
・ポールソン財務長官が、経営難に陥った住宅金融公社の経営支援を巡り、公的資金による資本
注入の検討を発表。米国発の世界の金融危機は2巡目とも言える新たな段階に入った。
こうした中、米欧の金融機関は、本国以外のリストラにも本格的に着手している。そして、この
リストラの余波は金融機関だけに収まりそうにない。既に荒波を受け始めているのが、国内の
不動産業界である。
>>2以降に続く