08/07/19 15:20:20
高成長を続けていたベトナム経済に変調の兆しが見え始め、同国への最大の投資国である韓国で
懸念の声が広がっている。株価が大幅に下落し、通貨危機に陥るとの厳しい見方も浮上してきた。
韓国メディアは「ベトナムが経済危機に陥れば、韓国に巨額の投資損失が発生する」と警鐘を
鳴らしている。
朝鮮日報などによると、ベトナムの4~6月期の国内総生産(GDP)は前年同期比5・8%増と
1~3月期(同7・4%増)から減速した。農業部門は、今年のコメ生産量が前年比3%増となる
など堅調だったが、世界的な鋼材価格の上昇の影響を受けた建設・不動産部門や政府の金融引き
締めの影響を受けた金融部門が伸び悩んだ。
中国に次ぐ潜在的な成長国として、ベトナムはここ数年、韓国を筆頭に海外から投資が加速。
今年6月には、150億ドル(約1兆5700億円)もの資金が流入した。石油精製関連施設に
多額の投資が行われたとみられている。
◆下方修正・格下げ
しかし、ここへ来て貿易赤字が拡大するとともに、物価も急上昇し、経済の先行きに対し厳しい
見方が広がっている。
6月の消費者物価指数(CPI)上昇率は前年同月比で26・8%と、過去13年で最大の伸び。
食品価格の上昇が続いているほか、住宅・建設資材も旺盛な国内需要を背景に値上がりしている。
インフレ圧力の高まりに対応し、政府は政策金利を12%から14%に引き上げた。これに伴い
今年の経済成長目標を9%から7%に下方修正した。
格付け会社のスタンダード・アンド・プアーズ(S&P)とフィッチ・レーティングスは今年5月、
同国の公的格付け見通しを「安定的」から「ネガティブ」に格下げした。モルガン・スタンレーは
6月に公表したリポートで、ベトナムに通貨危機が到来する可能性を警告している。
◆累計1兆4000億円
こうした状況に韓国政府は危機感は強めている。韓国がベトナム投資を拡大したのは、インドシナ
半島での「ニッチ(すき間)市場開拓」が狙いだったとみられているが、朝鮮日報によると、
1988年から現在までの対ベトナム投資額は累計で135億ドル(1兆4175億円)に上る。
2007年は45億8000万ドル(約4809億円)で、2年連続で世界最大の投資国となった。
現在、進行中の117件の大型建設プロジェクトには、韓国の建設会社70社余りが参加している。
韓国政府は最近のベトナム経済の現状について「(株価の代表的指標である)VN指数の大幅下落
をはじめ、資産価格の下落が目立っており、投資リスク管理の強化が必要」との厳しい認識を示し
ている。
ベトナム経済に詳しい第一生命経済研究所の西濱徹・副主任エコノミストは、「労働コストが、
いまも中国の半分の水準にあるベトナムに、今後も直接投資は続くだろう。ただVN指数の大幅
下落は米国のサブプライム(高金利型)住宅ローン問題の影響に加え、国営企業の株式会社化を
急ぎ、上場企業が増えすぎたことも原因。産油国ながら精製設備を持たず、価格の急騰した石油を
輸入しなければならないという皮肉な構造も持つ」と、ベトナムに政策上の問題点が少なくない
ことを指摘している。
◎ベトナム直接投資流入額の推移
URLリンク(www.business-i.jp)
◎ソース フジサンケイ・ビジネスi
URLリンク(www.business-i.jp)