08/06/05 16:14:26
■B-CASカードの役割
B-CASカードは、デジタル放送の受信機(チューナー)にセットし、
B-CAS方式で暗号化された映像(電波)を視聴可能な形にするために必要なカードだ。
デジタルチューナーと対になる形でテレビやレコーダーなどの製品に同梱されているが、
契約形態としてはビーエス・コンディショナルアクセスシステムズ(以下、B-CAS社)
という企業からの貸与品であり、使用開始時には同社と「B-CASカード使用許諾契約」
を締結することになる。契約は製品を購入、開封した時点で成立し、以後無償での利用が
可能だ。
B-CASカードのICチップには、そのカード固有の識別情報とともに「暗号鍵」データが
収録されている。対象となる放送(BSデジタル/110度CSデジタル/地上デジタル放送)
にはコピー制御信号(CCI)が加えられているため、その暗号鍵を使い暗号鍵を解読
(=データの復号)した後、CCIが規定する範囲でデータ利用(代表的なものが
コピーワンス)が可能になる。
これによってB-CASカードなしにはデジタル放送を視聴できず、かつCCIに定めがない
複製などのデータ利用は許されない、という日本のデジタル放送における限定受信方式
(B-CAS方式)が実現されているのだ。
■B-CASカードにまつわる疑問
しかしこのB-CASカード、実に不思議な点が多い。当初6月2日のサービス開始が
予定されていた「ダビング10」の延期とも無縁な話ではないため、その点を整理してみよう。
まずは、発行・運用にあたるB-CAS社が私企業であること。テレビ放送という国民生活の
インフラに近い部分が、いち営利企業に独占されているのだ。国民の受信料で運営される
準国営的放送事業者のNHK(18.4%)が出資比率1位だとしても、2位のWOWOW(17.7%)、
3位のNTT東日本/東芝/松下/日立(各12.25%)を足すだけでも66.7%と、議決権の
過半数をクリアしてしまう(出資比率は電波監理審議会(第860回)会長会見資料より)。
ちなみに、B-CAS社株式の譲受を制限する法律・法令は存在しない。非上場会社であり、
財務内容を公開する義務もない。
もう1つは、B-CASがクレジットカードサイズでしか供給されていないこと。
B-CASカードの実体(認証および信号の複合化)は、内蔵のチップに凝縮されているが、
外枠が大きいためカーナビやノートPCでの利用に支障をきたす。技術的には可能なはずだが、
現在のところ「B-CASチップ」は登場していない。そのほかにも問題視されている点は多い。
B-CASカードの登場により、視聴スタイルも変化した。従来、視聴制限の必要な放送は
世帯単位の契約が主だったが、契約がB-CASカードにひも付けられたため、カードを
持ち運べば未契約世帯でも視聴が可能になった。また、チューナー1基に付き1枚の
B-CASカードが必要となったため、家庭で複数枚のB-CASカードを所有する--複数契約を
締結している状態--も珍しくなくなった。これはNHKを例に挙げると、現行の1世帯1契約と
いう日本放送協会受信規約が反故にされかねず、視聴者に不公平感が生じることも
考えられる。B-CASカードのあり方そのものが問われる事態が多く存在しているといえる
だろう。
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