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★不機嫌な職場 [著]高橋克徳・河合太介・永田稔・渡部幹
職場の不快指数が高い。
朝の挨拶もなくそれぞれ淡々と仕事を始める。
同僚が困っていても業績にならないことはしない。
席が隣の人とでも直接会話せずメールでやりとり。トラブルがあれば、お互い関係者へのCC
(同報メール)付きで自分が正当であることを主張する。
本書はそうした寒々しい職場の例をあげたうえで、その構造を分析。かつての日本は仕事の
範囲があいまいなため、手抜き仕事が見逃されていた。個人個人の成果を厳密に問う成果主義の
導入によってそれはなくなったが、同時に、個人間のつながりが希薄になったとする。
経営コンサルタントを中心とした著者たちが、「職場の雰囲気が悪くて……」という相談を
よく受けるようになったのは2、3年前からという。読者層は20~40代が中心。「うちの会社を
見て書いているのではないかと恐ろしくなった」「うちは無関心の職場です」などの感想が届く。
本の後半では、社員同士の協力がうまくいっている組織を紹介。アイデアを一人で抱えこまない
仕組みをつくっているグーグルの広報担当者は、自社を「昔の日本の会社のよう」という。
IT企業のサイバーエージェントは2駅以内に住んでいる社員に家賃補助を出す。近くなら
時間を気にせず飲めるだろうという配慮だ。かつてよくあった「仕事帰りの一杯」の奨励だ。
「情報社会といいながら肝心の情報は共有されず、失わなくてもよかった日本らしさまで
失ってしまった」と担当編集の田中浩史さん。本書が売れているのは、この10年で激変した
職場環境が、いまもまだ揺れ動いていることの表れだろう。
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[掲載]2008年03月23日
[評者]小柳学(編集者)
URLリンク(book.asahi.com)