07/12/29 07:58:20
28日に相次いで発表された経済統計は雇用、物価、生産にいたるまで景気の先行き不透明感を
強くにじませた。大納会でも日経平均株価が大幅安となり、不安感を募らせた。原油などの
資源価格の高騰で物価がジワジワと上昇。企業の業績圧迫を通じて賃金や雇用が悪化すると
同時に、個人消費も萎縮(いしゅく)させ、景気の足を引っ張る「負の連鎖」が徐々に広がっている。
「来年の半ばにも景気は踊り場を迎える」との見方が出ており、物価上昇と景気後退が同時進行
する「スタグフレーション」の悪夢もよぎり始めた。
「原油高による物価上昇は望ましいものではない」
大田弘子経済財政担当相は28日の会見で、消費者物価指数が9年8カ月ぶりの高い上昇となった
ことに、“不快感”を隠さなかった。
≪いびつな景気拡大≫
物価は景気拡大で需要が増大し供給が追いつかず、需給が逼迫(ひっぱく)し上昇するのが、
望ましい姿だ。原油高という外部要因で上昇した場合、価格に転嫁しても増収分は産油国を潤す
だけで国内に残らないうえ、相次ぐ値上げが家計を圧迫し消費を落ち込ませる。しかも、中小企業
などは価格に転嫁できず、業績が圧迫され、それが雇用や賃金を脅かしている。
日本経済は2002年2月から始まる戦後最長の景気拡大が続いているが、その実態は外需頼みの
いびつな拡大だ。輸出の増加で生産が拡大し、企業業績も好調に推移したが、賃金が伸びず、
恩恵が家計に及んでいない。
だが、頼みの綱の外需は、サブプライム(高金利型)住宅ローン問題で米国経済の減速が
強まっており、「来年1~3月期の米国の景気動向次第では、日本の企業業績も悪化が避けられない」
(みずほ証券、上野泰也・チーフマーケットエコノミスト)との見方が出ている。
外需の暗転を前に、政府内だけでなく、経済界でも「企業が賃金を引き上げれば、内需が喚起され、
景気浮揚につながる」との声が高まり、日本経団連も来春闘での賃上げ容認の方針を打ち出した。
≪賃上げは逆効果?≫
ただ、経済界には「政府ができないバラマキを企業に押しつけるのか」との声も根強く、賃上げが
どこまで浸透するかは不透明だ。しかも、外需が弱含むなかで賃金だけを引き上げても企業収益を
圧迫するだけ」(農林中金総合研究所、南武志主任研究員)と、むしろ逆効果となる懸念が強い。
外需の失速に加え、悪い物価上昇が進むなか、「小幅なインフレさえも容認せず利上げを
繰り返した日銀の政策判断が、社会全体に値上げしにくい状況を作り出した」(南氏)と、
批判の矛先は日銀にも向き始めた。
需要を伴う物価上昇、企業業績と賃金の増大を実現し、景気の負の連鎖を断ち切ることは
できるか。政府も民間も、現状ではほとんど打つ手はないようにみえる。(高山豊司)
▽News Source FujiSankei Business i.on the Web 2007年12月29日
URLリンク(www.business-i.jp)
▽スタグフレーション(Wikipedia)
URLリンク(ja.wikipedia.org)