07/12/19 16:02:32
税制の設計では、公平性の担保が重要になる。ただし、何をもって公平とするかは、
人によって考え方、感じ方が違う。だから、税制の変更や新税の導入が難しいのである。
いずれ消費税増税論議が本格化したとき、低所得者層が不利だという「逆進性」問題が
一大論点となるだろう。年収400万円と1000万円の人がいるとする。1年間を暮らすのに
ともに400万円を使ったとすれば、消費税も同じ20万円である。だが、年収に対する
負担率は前者が5%、後者は2%という違いになる。消費税が逆進的といわれるゆえんで
ある。
ちなみに、所得に対する負担率で整理すれば、税にはもう2つの考え方がある。所得の高低に
関わらず負担率が同じであれば、「比例的」な税金ということができる。また、所得が高額に
なればなるほど負担率が高まる税金を、「累進的」という。所得税がその典型である。
消費税の逆進性解消のため、欧州諸国に倣ってたびたび話題になるのが食料品や生活必需品の
軽減税率の導入である。生活に必要不可欠なものは税率を下げ、低所得者の負担率を下げよう
というわけだ。だが、やめたほうがいい。第1に、恩恵を受けるのは高額所得者も同じだから、
公平性が高まるわけではない。第2に、軽減税率の対象にしてもらうべく各業界は必死になる。
自動車や住宅など高額商品を提供する業界こそ、血眼になるだろう。そこに、政治家が
付け込み、必ず利権となる。政治家に業界の生殺与奪の権など、与えないほうがいい。
実は、少なからぬ経済学者は、消費税は逆進的ではないと考えている。
前述した“5%と2%の不公平”は、1年に限って比較するから生じる。高額所得者の
消費性向は確かに低い。だが、死ぬまでにたびたび高額品消費を行い、所得を使い切って
しまうとすれば、貧乏人も金持ちも生涯所得に対して税率は同じ(現在は5%)になる。
つまり、消費税は所得に「比例的」な性格が強いのである。多くの人が短期的な比較を
重視し、政府も丁寧に説明しないから、誤解が改まらない。
ただし、高額所得者は貯蓄性向が高く、金融資産や不動産を、子に相続させることがある。
それには消費税がかからない。その点を問題視するのであれば、その貯蓄分(親が貯蓄した
分であり、親が相続した分は差し引く)に消費税と同じ税率の相続税を課すべきだろう。
それで、公平性は万全になる。
ここで注意が必要なのは、この公平性は比例的であることが担保されるという意味であって、
累進的だということではないということだ。私は、この文章の冒頭に、何をもって公平と
するかは人によって考え方、感じ方が違う、と書いた。多くの人が口にする、消費税が
逆進的だという批判、不満の正体は、実は“累進的ではないということ”にあるのでは
ないか。つまり、高額所得者の負担率が高くならないということへの不満である。
そうならば、消費税はそういう性質を持たないので、所得税その他の方策で解決するしか
ないのである。
後半を少々省略しています。ソース全文は
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