07/12/08 00:21:57
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(田中 秀征=福山大学教授)
細川護熙元首相が、私に「学校教育は、『読み書きソロバン』でいい」と言ったことがある。
まだ政権の座に就く前であった。
細川さんらしい単刀直入な言い方で誤解を招きやすいが、要は、義務教育では国語の読解力と
表現力、そして数学の基礎学力を身につけることが最も重要だと言いたかったのだ。
私もかねてから同じことを考えていたので、これに同調した。特に、理数科への知的好奇心が
薄れることは、将来の国の衰弱にもつながりかねないと不安である。日本では年々、子供たち
の間で数学嫌いや理科嫌いが増え続けている。「パソコンと英会話」さえ会得すれば生きて
いけると思っているような人がますます多くなりつつある。
■日本の子供たちの理科系の学力低下が懸念される
このたびOECD(経済協力開発機構)が、世界57カ国・地域で約40万人の15歳男女(日本では
高校1年生)を対象に実施した「学習到達度調査」の結果を発表した。2006年に実施したこの
調査に、日本からは約6000人の高校1年生が参加したという。
学力テストは「読解力」「数学的活用力」「科学的活用力」の3分野。日本の順位は、いずれの
分野でも前回(03年)より後退している。
すなわち、「読解力」では15位(前回14位)、数学的活用力10位(同6位)、そして科学的
活用力6位(同2位)だった。前回より参加国が増えているなどの事情があって正確には比較
できないが、日本の子供たちの学力、特に理科系の学力が低下傾向にあることは否定できない。
■昭和30年代は、文科系も数学を勉強していた
同一対象でのアンケートでは、「30歳くらいでどんな職に」という設問に対し、科学関連の
職業を挙げた生徒は8%にすぎなかったという。理数系が全盛だった「3丁目の夕日」の
昭和30年代とのあまりの違いに驚かされる。
当時のほとんどの国立大学では、文科と理科に入試科目の違いはなかった。東大でも数学は
4科目(数?、代数、幾何、数?、数?)から3科目を選ばなければならなかった。だから
学生寮でも、理科系学生が家庭教師先から持ち帰った数学の難問を、文科系の学生が瞬時に
解くことも珍しくなかった。
私は大学では人文系、社会科学系に進んだが、高校時代まではかなりの数学好きであった。
それは30代まで続き、枕元に難問題集を置いてそれを就寝前に解いたりしていた。さすがに
今は数学と無縁だが、専門家の友人に言わせると数学好きは将棋好きに形を変えて続いている
という。将棋の指し手に対する直感や思考は数学と同種のものらしい。
昭和30年代の理科系の秀才たちは、その後の日本の技術発展、高度成長の原動力になった
ことは言うまでもない。事務系がいかに優秀であっても日本の躍進はかなわなかった。
続きます。ソースは
URLリンク(www.nikkeibp.co.jp)
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