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【さよなら三木鉄道】残された時間少なく
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「改めて見てみると、沿線のいろんな良さが見えてくるんですよね」
女性は絵筆を運ぶ手を止め、そう言ってほほえんだ。
三木鉄道を見ながら育った井上美紀さん(43)は今、沿線の風景を描き続けている。
「田んぼや人の姿がどんどん後ろへと通り過ぎ、自分自身もどこかへ飛んでいってしま
うのでは…」。廃線が決まった時、小学生のころ車窓から見た光景があふれてきたという。
気が付けば、筆と画用紙を持って鉄道を見に出かけていた。
三木駅での駅員と客とのふれあい、石野駅付近を走るディーゼルカーの雄姿、駅舎の外で
駅員が子供に呼びかけている姿…。三木鉄道をテーマに描いた作品は数えられないほどに。
「なんてのどかなんやろ」。三木鉄道の絵は、本当は老後にゆっくり描いてみようと思っ
ていた。が、来春の廃線まで約半年。残された時間は少ない。
■みんなの鉄道、形ある思い出に
「三木鉄道廃止」。沿線住民らにとって衝撃的なニュースが頻繁に新聞紙面に躍り出る
ようになったのは今年に入ってから。
「まあ、あまり利用することもなかったし」。そうは思いつつも、いつもそばにいた当た
り前の存在。幼少のころは行楽に欠かせなかった。少し大きくなると買い物に、受験のとき
にもお世話になった。考え出すとなぜか寂しい気持ちが募った。
井上さんが、絵を描き始めたのは6年ほど前。ヨーロッパを旅した際、現地で偶然出会っ
た人からもらったチェコの城の絵に感動したのがきっかけだった。それから神戸市内で絵を
習い始めた。デッサンに出かけるたびに腕が上達し、作品展も何度か開いた。
井上さんは、三木鉄道を描いた中で最も好きな作品に『みんなおつかれさま』と名付けた。
子供たちが駅前で遊んでいるところに駅員が来て、「出発するよ」と呼びかけている様子を
イメージした。側では植木屋さんが木を刈り込んでいる姿があった。廃止は決まっても「まだ
まだみんながんばってますよ」という様子を描き出したかった。「活気があるのがいいね」。
夏に三木市立美術館に出展したとき、訪れた人々から好評だったという。
沿線に出かけると、写真を撮っている人やキャンバスを抱えた人によく出会う。みんな何らか
の形で残しておきたいのだろうと思ってしまう。
来春には廃止になってしまう三木鉄道。子供たちに遊んでもらおうと、井上さんは、裏が三木
鉄道のペーパークラフトになった絵はがきを作った。車体を何度もカメラで撮影し、写真をパソ
コンで加工した。絵はがきは美術館や三木駅などで販売している。
「写真で見ただけやと子供らも忘れてしまうでしょ」と井上さん。「子供たちが大人になった
とき、三木にこんな鉄道が走っていたことを感じてくれればいいなって思うんですよね」。
そう話す井上さん笑顔が優しかった。