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(>>1のつづき)
月乃さんは仲間と2人で、「病気」を乗り越えた経験を話すイベントを開こうと考え、「新潟お笑い
集団NAMARA」代表の江口歩さん(42)に相談した。これまで世の中のタブーに果敢に挑戦して
きた江口さんは「ちょうど精神障害者のイベントをやろうと考えていたところ」と司会を買って出てく
れた。
第1回公演は平成14年5月31日、新潟市内で開かれた。1度きりのつもりだった。
「ところが、70人の会場に170人が来る大盛況。終わった後も本人や家族から『もう1回見たい』
『私も出られすか』といった電話が相次いで。新潟でこんなに需要があるんだとびっくりした」。
月乃さんは「こわれ者の祭典」を続ける決心をした。
単独ライブや自主映画上映などの関連イベントを含めると公演は約80回に上り、関東進出も
果たした。公演後の打ち上げで来場者と交流、出演者は回を重ねるごとに増えていった。
幼少からの祖父の暴力が原因で、強迫神経症に悩まされてきたアイコさん(24)も「こわれ者の
祭典」で人生が変わった一人だ。
「殴るけるより、言葉の暴力の方がつらかった。『お前はダメだ、ゴミだ』と言われ続けて、
コンプレックスがすごくあった」。小学校のころは休み時間ごとにトイレで顔を確認。
高校では授業中に呼吸の仕方が気になって、学校を休みがちになった。
どん底だった10代の終わり、月乃さんのパフォーマンスを見て鳥肌が立った。「格好悪いこと
を全身全霊で見せてくれる大人に初めて出会った。苦しいのは自分だけじゃないんだと知ったら、
すっごく楽になって」
今では詩の朗読や弾き語りを披露、単独ライブを開くまでに成長した。「月乃さんに出会って、
私は180度変わった。昔の私と同じような人がいたら、今度は私が支えになりたい」。
普通の人の3倍、人に会うのがアイコさんの今の目標だ。
身体障害者も共演する「こわれ者の祭典」だが、月乃さんは当初、身障者が加わることに反対
だった。「精神障害と身体障害は問題の質が違う」と考えていた。