07/11/16 14:08:37 lBy2km2H0
>>526
好きだから、幸せになって欲しいから、竹山の結婚を期に身を退こうと決めた俺。
でも、携帯にさよならと告げた途端、独りぼっちになった自分に涙がこぼれた。
何て俺は弱いのだろう。
古びたアパートの俺の部屋に残されたタバコ。火をつけた。ラッキーストライク。
立ちのぼる煙。竹山と同じ、苦みばしった男の匂いがする。
目の前に竹山の顔がよみがえる。恥ずかしい、照れくさいと言いながらも、
その眼はいつも俺を真正面から真剣に見てくれた。そして微笑んでくれた。
でも、もう忘れよう。
忘れるんだ。煙と一緒に忘れるんだ。思い切り肺に吸い込んだ。
生まれて初めてタバコを口にした俺は、当たり前のように激しく咳き込み、
げほげほとむせ、煙が目に沁みて、情けなくて、悲しくて、泣いた。ただ泣いた。
突然激しいノックがして、チャイムが鳴って、バン!とアパートを揺るがす音が響いた。
「何やってんだよ!」
竹山が立っていた。顔から汗を滴らせ、激しい息をしながら、立っていた。
後輩を置いて、飲み会を抜けて、タクシーを飛ばして、
俺一人のために駆けつけてくれたのだ。
涙でぐしゃぐしゃの俺を見て、
竹山はとても悲しそうな顔になって、無言で抱きしめてくれた。