【文化】天皇家に祟る怨霊の歴史 書評:日本の怨霊 [著]大森亮尚at NEWSPLUS
【文化】天皇家に祟る怨霊の歴史 書評:日本の怨霊 [著]大森亮尚 - 暇つぶし2ch1: ◆Robo.gBH9M @うしさん大好き! ロボ-7c7cφ ★
07/10/24 19:06:40 0
天皇家の歴史を語る書があるのならば、天皇家に祟る怨霊の歴史を語る書があっても不思議ではない
―と著者は本書執筆の動機を語る。

京都には上下(かみしも)の御霊神社が鎮座し、「東京に遷都した後の天皇家の負の遺産」を
引き継いだかのようにそれぞれ八柱の御霊を祀っている。

いちばん有名なのは雷神と化した菅原道真であるが、この一冊で「天皇家に祟る怨霊の中心人物」として
主に描かれるのは、井上内親王と早良親王という二人の皇族だ。
井上内親王は聖武天皇の皇女で、十一歳から二十年にわたって伊勢神宮の斎王だった聖処女である。
退下(たいげ)して白壁王(後の光仁天皇)と結婚。四十五歳という「神業的出産」で他戸親王を生む。

奈良時代政治史には皇位継承をめぐる暗闘が絶えない。天武天皇の嫡系は競争者を排除しすぎて、
称徳女帝の代で途絶え、権力闘争を避けて飲酒に身を晦(くら)ましていた天智天皇系の光仁天皇が
六十二歳で即位するに至る。

井上皇后の至福は一年余りしか続かない。宝亀三年(七七二)三月、天皇を呪詛していたという嫌疑で
皇后を廃される。他戸親王も廃太子。母子は同じ日に死ぬ。不審死である。代わりに立太子したのが
山部親王(後の桓武天皇)とあればプロットが読めよう。

早良親王は桓武の皇太弟である。こちらは延暦四(七八五)年九月、謀反の容疑で幽閉され、憤激の
あまり絶食して死んだと言い伝える。

それから果てしない怨霊の跳梁が始まる。宮中で怪異が続出し、桓武天皇は不安症候や不眠
ノイローゼに悩まされる。華やかな平安遷都の裏面には、祟りへの恐怖と不安の影が落ちている。
死者の怨念が生者の歴史を動かす。

著者は怨霊の世界を覗くのではなく、魂の重心をあちら側に掛け、歴史の深みに眠る怨霊と交信するが、
文体には達観したユーモアがまじり、行きっぱなしにさせず無事にこちら側へ連れ戻す。

日本の「鎮魂の文化」は、怨霊への畏れを知り、「勝者が敗者に謝罪し、鎮魂する」希有な逆転の
論理だという指摘が心に訴えかけてくる。[評者]野口武彦(文芸評論家)
URLリンク(book.asahi.com)


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