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・奈良県や札幌で、救急搬送された妊婦の受け入れを医療機関が相次いで断った問題で、
拒否された患者全員が出産まで一度も産科を受診してなかったことから、産婦人科医の
間で批判の声が上がっている。
「病院や役所ばかり責められるけど、妊娠六カ月まで医者に行かない妊婦がそもそも悪い」
札幌市内の総合病院の産婦人科で働く四十代男性医師は、奈良の女性の自己責任を問う。
奈良の女性も、札幌で五回以上断られた女性五人も、全員に産科受診歴が無かった。
「妊娠したかなと思ってから出産まで約二百八十日。その間、一度も受診しないというのは
確信犯ですよ」。札幌市産婦人科医会の遠藤一行会長も語気を強めた。
通常は妊娠の兆候に気づいた時点で産科にかかる。容体が急変しても、119番通報すれば
かかりつけ医に運ばれる。国民健康保険なら一人三十五万円の出産育児一時金も支給される。
遠藤医師が「確信犯」と嘆く患者の大半は国保の保険料が未納、または無保険者という。
保険料未納なら、失業や災害など特別な事情がない限り一時金は差し止められる。保険を
使えないので妊娠しても産科にかからず、陣痛が始まってから119番通報する。
「救急車に乗れば必ずどこかの病院に行けますから。無事産んだら、退院する段になってお金が
ない、と。ひどい場合は子供を置いて失踪する。病院はやってられませんよ」。遠藤医師は嘆く。
同医会の調査によると、二○○六年度に、救急指定を受けた札幌市内の十四医療機関
だけで、出産費用の未払いは二十六件、総額一千万円を超す。
医療機関からみると、かかりつけ医がおらず、救急搬送される妊婦は、未熟児などの危険性が
不明でリスクが高い上、出産費不払いになる可能性も高く、受け入れを断る病院が出てくる。
ただ、産科にかからない妊婦を責めるだけでは、子どもの生命は守れない。六十代の男性
医師は「産科に行かない妊婦にはそれぞれ事情がある。救急態勢以外に、母親側の背景を
検討して対策を講じないと、問題は繰り返される」と訴えている。(一部略)
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