07/08/27 13:49:45 M8hvAAQE0
償い
月末になると ゆうちゃんは 薄い給料袋の封も切らずに
必ず 横町の角にある郵便局へとび込んでゆくのだった
仲間はそんな彼をみて みんな 貯金が趣味のしみったれた奴だと
飲んだ勢いで嘲笑っても
ゆうちゃんはニコニコ 笑うばかり
僕だけが知っているのだ 彼は ここへ来る前に
たった一度だけ たった一度だけ
哀しい 誤ちを 犯してしまったのだ
配達帰りの 雨の夜 横断歩道の人影に ブレーキが 間にあわなかった
彼は その日 とても疲れてた
人殺し あんたを 許さないと 彼を ののしった
被害者の奥さんの 涙の 足元で
彼は ひたすら大声で 泣き乍ら ただ 頭を床に こすりつけるだけだった
それから 彼は 人が変わった 何もかも 忘れて 働いて 働いて
償いきれる はずもないが せめてもと 毎月 あの人に 仕送りをしている
(下に続く)