07/08/15 13:05:29 0
(>>1のつづき)
フランクルが語るのは英雄や殉教者ではなく、ごく普通の人々の小さな「死」や「犠牲」ですが、
著者まずもっての感動は、どんな極限にあっても、人間の尊厳を守り抜く少なからずの人々の
存在でした。
著者にも愛の救いがありました。妻の面影のなかに勇気や励ましの眼差しを見たのです。
精神の豊かさへの逃げ道をもつことで、繊細な人が頑丈な身体の人よりもよく耐え忍ぶという
逆説がありました。
クライマックスは絶望からの救いの思想です。人生に期待するのではなく、人生がわれわれに
何を期待しているかを問うこと、具体的には唯一、一回限りのわれわれ自身の苦悩を誠実に
悩み抜くことが結論でした。苦悩の直視と時にはそのための涙が偉大な勇気だともいうのです。
いかなる人間も未来を知らないし突然、何らかのチャンスに恵まれないとも限らない。未来に
落胆し、希望を捨てる必要はないとのフランクルの仲間への励ましは、収容所の内と外で
変わるものではないでしょう。
本日付朝刊の特集面に登場している経済同友会終身幹事の品川正治さんは市場主義全盛に
抗して「人間のための経済」を唱え「人間の力」「人間の努力」に期待する心熱き財界人です。
その「人間中心の座標軸」が戦場の体験から生まれ、戦後も一貫させてきたことが語られるなど
鈴木邦男氏との対談は熟読していただきたい内容です。
品川流の人間のための政治や経済からすれば、若者を「希望は戦争」との絶望に追い込み、
大量の低賃金・不安定労働を生み出してしまった政治や経済は間違っているに決まっています。
是正の取り組みに人間の努力が向けられなければならないはずです。新たな大きな課題です。
日本はどこに向かっているのか。国民の不満と不安が噴出したのが先の参院選の結果だったと
いえるでしょう。富者と貧者、都市と地方の容認できないほどの格差拡大、富める一部が富み、
弱者、貧者が切り捨てられる社会は国柄にも反します。何より人間の尊厳は守らなければ
なりません。(以上、一部略)