07/07/29 23:49:47 IxcgDRYN0
さても聞こしめせよ>>1。刷れとかかはりなきことなれど。
きのふ近うある吉野家に行きたるに、なでふこともなう人のおほくあれば、
えもゐられず。よう見るに、垂れ幕の下がりてあり、百五十円引きとなむ
書きたる。あなや、をこかな、しれ者かなと。
わぬしら、よき人は百五十円引きばかりにてひごろ来も来ぬ吉野家になど
か来たらむ。百五十円よや、よや。
親子連れあり。一族郎等ひきつれて吉野家に来たる、いとむくつけし。
あまつさへ、てて様は特盛頼まうわいの、など言ふ様こそ、かたはらいた
けれ。百五十円給ぶに往ねよかし。さるは、吉野家てふ所、げに殺伐たら
むこそつきづきしけれ。ひの字めく餉台のあなたざまに居たるをのこども
の、いさかひいつ始まらむともしらず、かたみに刺すや刺さるるやと案ぜ
らるるけしきのいとをかしかるべきを、をんな子らはいぬべし。
かかるうちに、やうやうゐらるるかと思ひしに、傍らなるしづ山がつの、
大盛露だくをとかや言ふを聞くに、さらにこそぶち切れたれ。
いで、露だくなるはこのごろにてはつゆ流行らざるを、げにをこざまなる
かな。したり顔して何のつゆだくをや。さはまことに露だく食はまほしき
ものかと問はばや。問ひ詰めばや。半刻ばかりぞ問ひ詰めばや。むげに露
だくと言はまほしきのみにやあらむ。
吉野家知りたるまろに言はすれば、月ごろ吉野家知りたる人の間につとに
流行らむは、なほ葱だくにこそあらめ。大盛り葱だくかりのこ、これなむ
才ある人の頼み方なる。葱だくてふは、葱の多く入りたるに、肉の少なめ
なる。これこそ。また大盛りかりのこは、いふもおろかなり。
さるに、こを頼めば次より雇ひ人に目つけらるるは必定ななれば、危ふき
諸刃の剣にて、つたなき人にはえ薦めぬわざにこそあんなれ。
とまれかうまれ、わぬしらつたなき人は牛鮭定食などやうをば食へかし、
とこそ。