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ジャーナリズムの使命
先月、岡山大学で三十人ばかりを相手に、ジャーナリズム論を講じたときのことだ。
返ってきた感想文の一つに、「二度と戦争をしないのが幸せなことか」とあった。
この国の若者に起きはじめている意識変化を見せ付けられた気がした。
ジャーナリズムの使命は、社会正義の実現に寄与することであり、
その場合の正義とは米ブッシュ大統領が、ならず者国家などを仕立て上げて、
自己を正当化するときに使用する一方的な論理ではむろんなく、
差別とか貧困とかという明らかな社会矛盾の対極を示す言葉だ。
社会矛盾は、社会悪と言い換えてもいいと思うが、その最たるものは戦争だから、
ジャーナリズムの使命の究極はまた、戦争回避にあると、
信じてきたままを講じたことへの反応だった。
インターネット上に過激な書き込みを行うネット右翼の存在、
あるいは働けど楽にならないワーキングプアと呼ばれる若者のなかにも、
状況改変を、強いイメージに求めていくきらいがあるようだ。
東京都知事選での石原さん圧勝の一因にも、それは指摘されている。
徴兵制など敷かなくても、格差社会が拡大すれば、
若者は自然と「軍隊」へ流れてくるとはよく言われることだが、
社会の閉塞(へいそく)構造は不気味な様相を呈してきている。
戦争体験者が減っていくのは自然の摂理で仕方がないとして、
この国が再び戦争の道を歩むということなどが、これはあっていいはずがなく、
ジャーナリズムはやはりその使命を果たし続けなければならないし、
あり方が厳しく問われてきてもいるのだと、参院選渦中に強く思う。
(特別編集委員・横田賢一) 山陽新聞
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